2012年3月11日日曜日

「ぼくの名前はナルド」 (4)


今日311日は東日本大震災から1年です、日本各地、世界各地で追悼式が行われます。犠牲となられた多くの方々の、鎮魂の祈りとともに、被災された方々や、被災地への一日も早い復興を祈りたいと思います。知り合いの女性はフランスの南の都市モンペリエで東日本大震災発生後すぐに支援団体を立ち上げ、モンペリエで暮らす日本人フランス人その他の国々の人たちと力を合わせ、東日本を支援するために、チャリティーコンサートを始めいろんな活動を続けています。そしてその活動を永続的に行いたいと言っています。 
世界各国の人々が日本の国難といわれる大震災を受けた日本に対し、大きな支援と励ましを送ってくれています。感謝の気持ちでいっぱいです。

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「ぼくの名前はナルド」 (4)


とても大きな町だった。夜になり、だんだん人影が少なくなり、真夜中の町は、シーンと静まり返っている。ヒタヒタヒタ、ぼくは、自分の足音を聞きながら走った。その時、前方に黒い大きな影がたくさん見えた。前方から大きな犬が、五匹群れになって現れた。そして、ぼくの前に立ちふさがった。一番前の犬が言った。「こら、どこへ行くんだ。見ない顔だな。まだ小僧か。どうした、迷子になったのか、自分の家がわからないのか。それとも、お前も俺たち同様、勝手しほうだいの、わがままな人間の奴らに、捨てられたのか。かわいそうに。そうだろう」ぼくは、五匹の犬に取り囲まれた。他の犬たちは、「ぼくのにおいを、くんくんかいでいる。「違うよ。ぼくは、遠い所へ連れていかれて、そこから家へ帰れるかどうか、どんなに頭がよいか、テストされているんだよ。ぼくは、絶対、帰れるよ。帰ってみせるよ」ぼくは、小さな声で言った。一番体の大きい犬が、フフンと鼻で笑いながら、「お前はバカだ。捨てられたのがわからないのか。人間たちは、いつも気まぐれで、自分の都合で、俺たちを、かわいがったり、じゃまものにしたりするのさ。どうだ、俺たちの仲間にならないか。自由っていうものが、どんなに素晴らしいものか、お前に教えてやろう。町には食べる物なんか、何だってあるのさ。人間は、ぜいたくで、まだまだ食べられる物まで、どんどん捨てるんだ。おかげで俺たちは、食べるのに事欠かないってわけさ。主人にへこへこして、ろくにエサももらえず、年がら年中くくりっぱなしにされて、人間って奴は、俺たちを何だと思っているのか。あーごめんだごめんだ。人間たちに飼われるなんて、まっぴらだ。時々、人間どもに、こわい顔してうなってやるのさ。皆、こわがって逃げていくってもんだ。悪いことは、言わねえよ。俺たちの仲間になった方が、お前にとってどんなに幸せなことか」と、言った。ぼくは、よくわからなかった。ぼくのお母さんも、人間と仲良く暮らしていた。ぼくも、ずっとずっと、いつまでも人間と一緒に暮らすものだと思っていた。「ぼくには、よくわからない。でも、自分で正しいと思ったことを、したいんだ。ぼくを遠くへ、置いていったおじさんに、ぼくが人間と一緒に、仲良く暮らそうと思っていることを、伝えたいんだ。そして、ぼくが、どんな遠い所からでも、家へ帰れるってことを、証明したいんだ」と、ぼくは、答えた。五匹の犬は、かわいそうに、というあわれみの表情で、ぼくを見ていた。大きな犬が言った。「そうか、これほど言ってやっても、お前は、人間を信用しているのか。でも、もしかして、人間に裏切られたと、わかった時、決して負けるんじゃないぞ。たくましく生きるんだぞ。俺たちがいることを、忘れるなよ。じゃあ行け。チビ頑張れ」他の犬たちもそれぞれに、「頑張れ」「チビ頑張れ」と、言ってくれた。

                つづく

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