2012年3月4日日曜日

「ぶきよう先生大好き」


 わたしの名前は、かあこ。小学三年生の女の子。
 担任の先生は、愛先生。
愛先生は、金太郎みたいな先生だ。金太郎といっても男じゃないよ。
どこが金太郎みたいかというと、愛先生は、右手に一人、左手に一人、そして背中に一
人、三人の子供を一度にぶらさげることができるんだ。
いつも愛先生のまわりには、子供たちが集まって、先生にぶらさげてもらうのを、取り合いしてるんだ。でも愛先生は、いつも忙しそうに走り回っている。だから、なかなかぶらさげてもらえない。それでわたしは、愛先生に聞いた。
「愛先生は、どうしてそんなに忙しそうに走り回っているの?」
愛先生は、言った。
「先生は、ぶきようなの。ぶきようだから人より時間もかかるし、いつも一生けんめいなのよ」
わたしは、よくわからなかった。お母さんに聞いてみた。
「ぶきようってどんなこと?」
「何でも楽にパッパッとできる人がいるけど、一つ一つ一生けんめいしないと、ってことかしら」
「愛先生は、「ぶきようだから、いつも一生けんめいしているの」って、言ってたよ」
「自分のことぶきようだと言える人ってなかなかいないのよ。誰でも楽したいでしょ。自分はぶきようだから、いつも一生けんめいしなくちゃ、って思う愛先生は立派な人ね」
愛先生はぶきよう先生なんだ。でも立派な人なんだ。愛先生大好きっ、と、わたしは思った。

ある日、学校で飼っているうさぎのももが、急に元気がなくなり病気になった。愛先生は、病院へももをつれて行ってくれた。
「ももは、重い病気になってしまったの。ももの病気が良くなるように、みんなでお祈りしようね」みんなで鶴を折ろうということになり、たくさんの鶴を折った。夜は、ももが一人になるので、愛先生は、ももを家へつれて帰ってくれた。教室に、たくさんの鶴が飾られている。でも、ももは、元気にならなかった。
 校庭の隅へ、ももを埋めてお墓を作った。みんなが泣いている。愛先生も泣いている。
「ももが、いなくなって淋しいね、悲しいね。ももありがとう。たくさんの思い出ありがとう。みんなで言おうね。ももも、みんなにありがとう、って言ってるよ。ももは、空からいつもみんなを見ていてくれるよ。みんなといつもいっしょだよって、言ってるよ」
「いつまでも、もものこと忘れないよ」わたしは、ももに言った。

わたしのクラスは、みんなで八人。男の子が五人、女の子が三人。ときどきケンカが起こる。誰かが泣く。そんな時、愛先生は、じっくりと話を聞いてくれる。仲直りの握手ができるまで、話を聞いてくれる。誰かが意地悪した時は、「自分が、されてイヤと思うことは、人にしないようにしようね。とっても大事なことだから、覚えておいてね」愛先生は言った。

わたしは、三年生になって愛先生から教えてもらったことを、考えた。
l  うそをつかない。
l  コツコツでがんばろう。
l  されてイヤなことは、イヤと言おう。
l  正しいのはどれか、よく考えよう。
l  人の気持ちになってみよう。
わたしは、寝る時、愛先生の顔を思い出しながら、これを三回言う。
愛先生は、今日も忙しく走り回っている。
愛先生は、ぶきようだ。
でも立派な人なんだ。
わたしは、愛先生が大好きだ。    

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