2012年3月8日木曜日

「ぼくの名前はナルド」 (1)


小犬の一人旅のお話です。


  ぼくが生まれたのは、海の見える町だった。お母さんと、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいたんだ。よちよち歩けるようになった時、ある日突然お兄ちゃんがいなくなり、次の日お姉ちゃんもいなくなった。「どうしたの?どこへ行ったの?」ぼくは不安になった。次の日ぼくは、小さな箱に入れられ、車に乗せられた。お母さんのおっぱいが大好きで、いつまでもお母さんと一緒にいたかったのに、本当に悲しかった。
箱から出た時、驚いた。そこは、知らない家だった。おじさんとおばさんと、小学校六年生、小学校二年生、幼稚園、の三人の男の子と、小学校四年生の女の子のいる家だった。
ぼくは、コロという名前をつけられた。大きなおうちで、子どもたちは、ぼくをとりあいして、広い庭で遊んでくれた。この家のみんなが、ぼくのことを気に入りかわいがってくれていると、信じていた。この家へ来て、六ヶ月が過ぎた頃、一番上の子は中学校へ、一番下の子は小学校へ入学した。朝、みんなは、ガレージの前につながれているぼくのほうを見ることもなく、バタバタと出かけていく。おばさんは、ぼくの前にポンとエサをおいて、パートの仕事に行く。ぼくの仕事は、留守番だと思って、一生けんめい仕事をした。家族以外の人が来たら、一生けんめいほえたよ。バイクに乗った郵便屋さん、軽トラックでやってくる宅配便のおじさん、セールスのおじさんやおばさん、お姉さんも来たよ。そして回覧板を持ってくる、隣の家のおばあさん。おばあさんには、ぼくはほえなかった。隣の家の人だとわかったし、顔も覚えたから。おばあさんは、時々そばに来て、「今日も一人だね。毎日毎日立派に留守番して、本当に偉いよ。それにしても、この頃は、遊んでもらえないし、ろくに散歩にもつれて行ってもらえないんだろう。はじめのうちは、かわいい、かわいいとおもちゃにしていたのにね。本当にかわいそうなことだよ」と言ってパンをくれるのだった。小さい頃の時のようには、遊んでもらえなかった。誰も声をかけてくれなくなった。「ぼくは、一人ぼっちなんだ」淋しくて悲しくて、お母さんや、お兄ちゃんお姉ちゃんのことを思った。鎖でつながれているぼくは、どこへも行くことができなかった。「かわいがってくれなくても、散歩につれて行ってもらえなくても、一日一回エサはもらえるし、これでも幸せなのかもしれない。もっともっと不幸な友達もいるかもしれない」と、自分をなぐさめた。

                                 つづく

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