2012年4月4日水曜日

「高齢者介護の社会化について」(2)


(2) 

 高度経済成長を背景にして、日本が経済発展し、豊かな社会になることを目標としてつき進んできた、日本の現代社会は、豊かな社会のみが直面する問題として、高齢者の介護問題があります。経済が高度に発展し始めると、都市への人口の集中、女性の労働市場への進出、核家族化などが進みます。家族による要介護高齢者の家庭内介護が、困難・不可能になった直接的な理由として、

 ●要介護高齢者の増加、介護期間の長期化、老老介護などに見られる長命社会が実現したことによる影響

 ●都市への人口の集中(過疎化の進行)、核家族化の進行、一人暮らしや夫婦のみで暮らす高齢者の増加(子どもとの同居率の低下)、働く女性の増加、などにより生じた家族の介護機能の低下

が、あげられます。

 人口の高齢化にともなって、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯の増加が目立っています。かつては家制度のもと、子(特に長男)が、高齢となった親と同居し扶養することを期待されていました。現在では、こうした家族規範が揺らぎ、高齢者と家族との関係は多様となってきています。このような変化は、社会の変化や制度の変化の中で生まれてきています。つまり歴史的変化といえます。第二次大戦前の日本の家族のあり方を特徴づけるのは、「家制度」です。「家制度」は、家の統率者である戸主に、大きな権限を与える制度です。その戸主は、家督相続によって、長男に継承されることを原則としています。老親の扶養は、そのような家督を相続した戸主の義務でもありました。このような家族のあり方は、1898年に公布施行された明治民法によって規定されていました。家制度の原型は、武家社会に広がっていた風習であり、日本社会に共通してみられた風習というわけではありませんが、明治政府は、武家の風習を採用し、社会全体に広めたのです。明治期に民法の中で規定された家制度はその後、日本社会に広く行き渡り、現在にいたるまで、親との関係を含めて、家族のあり方に色濃く影響を与えています。しかし戦後における民法の改正の中で、この明治民法の「家制度」は、法律上から姿を消します。


つづく

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