2012年5月9日水曜日

「ラブレター」

 あなたにお手紙を書くのは、何年ぶりのことでしょう。あなたとお別れしてから、早183日が過ぎてしまいました。あなたは、どこで何をしているのでしょうか。あの日は、美しく咲いた桜の花が、淋しげに悲しげに、ハラハラと散っていましたね。あなたとの別れを悲しんでいるかのように。あなたは、春を楽しませてくれた花達をつれて逝ってしまいました。あの日から私は、涙の泉のように、あなたを想い涙を流し、風が吹けばあなたを感じ、小鳥を見ればあなたが会いにきてくれたのだと思い、自分の周りのものすべてに、あなたの姿を求めて過ごしています。それでも月日は無情にも春から夏へ、夏から秋へと、何もなかったように移りすぎていきます。子供達が大きくなったから、これからは毎年二人で旅行しようと言っていたあなた。結婚二十五年目の銀婚式を迎える時には、ヨーロッパへ行こうと言っていたあなた。夢で終わってしまいましたね。この「きみまち坂」に立っていると、あなたと出会ったあの日のことが、私の胸に昨日のことのようにうかんできます。いつも私は、あなたを待っていましたね。あなたがアメリカへ長期出張した時、私は私の最愛の人に、一年ぶりに会える大きな喜びで胸をふくらませ、成田空港で待ちました。あなたがヨーロッパへ出張した時も、飛行機の到着時間が遅れて、五時間も待ちました。あなたは、私の夫であり、恋人であり、父親であり、兄であり、親友であり、そして私のスーパーマンでした。力強く、たくましく、心広く、心優しかったあなた。私にたくさんの幸せをくれてありがとう。あなたからもらうばかりで、私は、あなたに何かお返しができたでしょうか。出会いから別れまで、二十四年というあっという間の年月でしたが、中身は凝縮された愛で満ちあふれていました。近い将来、また、あなたに会えるのだと思うと、私の心は、期待と喜びでおどっています。成田空港で帰国するあなたを待っていたように。こんどは、あなたが待っていて下さいね。

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