寒い日が続いています。私の冬の楽しみは、炬燵に入って本を読むことです。不器用な私が、仕事、家事、子育ての日々を無我夢中で過ごして何十年、今やっと静かな時間を持てるようになりました。何事にも没頭してしまう私は、読みだしたら少しでも早く最終章に辿り着きたいと思い、深夜まで読み耽ってしまいます。最近の若い人達は、速読の術を身につけて驚く速さで本を読んでいますが、私は、じっくり1ページ1ページを、丁寧に読むのが好きです。速読はできません。
家の近くに、府立図書館があるので助かっています。一人5冊まで、2週間借りることができます。いつ行ってもたくさんの人で賑わっています。若い現役の学生さん達は、閲覧席で熱心に勉強しています。一番多いのはシニア層の人達で、リュックに本を詰めて来ては、返却と貸し出しを繰り返しておられます。年金暮らしのシニア層にとっては、図書館で本を借りて読むのが賢い方法です。今は亡き父の趣味は読書で、リタイアしてからの毎日の楽しみは、本屋へ行くことでした。住んでいる町には本屋が三軒ありましたが、自分で車を運転してその三軒の店を順に回っていました。三日に一度行くので本屋の常連となり、行っては店の人達とのおしゃべりも楽しんでいました。驚いたことに、本屋の女性店員さんが結婚すると聞いて、お祝いを届けていたことがありました。そこまですることはないと思いましたが、父はそれほどの常連客だったのでしょう。毎日本屋へ行っては、何かしら買ってくるので(たまには「今日は空振り」と言うこともありましたが)、父の蔵書は大変な数となり、晩年には市の図書館へ寄贈させてもらっていました。私も読みたいと思った本はもらっているので、私の蔵書も増えました。そのうち処分しなければなりません。
今夢中で読んでいるのは、西村雄一郎著「殉愛(原節子と小津安二郎)」です。原節子さんは、昨年九月に95歳で亡くなられましたが、五十年以上もの隠遁生活を過ごされ、伝説の女優と言われています。この本は、原節子さんが御存命だった時、今から三年前に出版されたものです。小津安二郎は、日本を代表する映画監督で、黒沢明監督と並び外国にもよく知られています。以前出会った英会話教室の講師が「日本の映画、小津安二郎に魅力を感じている」と、言っていたことを思い出します。そう言った講師は一人だけではありませんでした。日本の今の若い人達は、小津安二郎の名前も知らないでしょうにと思い、とても驚きました。私の未熟な英会話力では、深い話はできませんでしたが、小津安二郎映画のどこに魅力を感じているのかを聞きたかったと残念に思います。
読書の楽しみは、自分の知らないことを知るという楽しみです。人間の営みが綿々と続いてきている時空の中で、自分の一生はわずかなものですが、たくさんの先人達の生きざまを、本は教えてくれます。