フランス在住の日本人女性から、聞いた話です。現代のフランスでは、恋愛をしてもそう簡単には、結婚しないそうです。婚姻届を出さずに共同生活をしているカップルがたくさんいるそうで、若い世代では多数派になりつつあるとのことです。初婚カップルの90パーセント以上が、結婚前に共同生活を始めています。フランスで生まれた赤ちゃんの43,7パーセントが婚外子です。(2002年)日本で婚外子というと、正規の婚姻届を出していないカップルの間にできた子という暗いイメージがありますが、フランスではそうではありません。夫婦を名乗っていても、実際は非婚というカップルが増えています。結婚か非婚か、正しくは知りませんが、フランスの現大統領も前大統領も、ひっついたり離れたりと、シルバー世代でさえ、男女関係において安定しないお国柄というイメージを持ってしまいます。
フランスで結婚の制度を選ばない人が増えている理由として、両親からの若者の自立、女性の精神的・経済的自立が進んで、結婚の制度に頼らなくてもよくなったことと、結婚・離婚の法手続きの厄介さがあげられます。
フランスでのカップルの生活の形態が三つあります。
● 結婚・・・民法の制度で税法など他の法制度にも一貫したかたちで関わってきます。
● ユニオン・リーブル・・・「自由な結合」という意味で、法律上は内縁です。民法上それぞれ独身ですが、現実の生活上において、保護や特典があります。結婚と同じくパートナーの社会保険の受給権者になれるので、疾病保険、出産保険、パートナー死亡時の一時金などが給付されますが、遺族年金はなく、遺言によって相続しても、結婚よりうんと高い相続税がかかります。結婚よりはるかに自由で、解消は簡単です。
● パクス(Pacs)・・・1999年公布の法「連帯の民事契約」Pacte civile de
solidariteの略です。きっかけは、同性カップルの法的承認が目的で作られましたが、同性、異性どちらのカップルでも利用できます。居住地区の裁判所で契約を結べば、台帳に登録され、証明書がもらえます。被扶養パートナーは、保険の受給権者であり、パートナー死亡時の一時金はもらえますが、遺族年金はもらえません。負債は結婚と同様連帯責任で、相続税は結婚より重くユニオン・リーブルより軽く、結婚とユニオン・リーブルの中間のようなものです。
結婚は「祝福」、ユニオン・リーブルは「少々無関心」、パクスは「許可」というような感じです。すでにユニオン・リーブルが「結婚を前提とした同棲」でない時代に入っていて、「脱結婚化時代」になっていると指摘されています。
日本とフランスでは、社会に対する考え方に大きなちがいがあります。日本では、戸籍制度に代表されるように、家庭が社会の基礎単位とされ、フランスでは、個人が社会の基礎単位で、個人登録簿が戸籍のかわりになっています。
フランスの離婚率は高く、パクス法ができて三年間の合計で、パクスの解消率は7,8パーセントと低く、離婚率は約38パーセントなので、それに比べるとずっと少ないようです。
棚沢直子著「現代のフランス人たちはなぜ結婚しないのか」より
フランスでのカップルの三つの生活形態を知りましたが、それでもいろんな疑問が残ります。恋愛した二人が、お互いを人生のパートナーとして生きていこうと決めた時、何の迷いもなく結婚し家庭を築き、子供を産み育てるという人生最大の事業に、挑もうという熱い大きな情熱を持ってスタートするものだと、私は思っていました。
つづく
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