誰にも思い出の中の匂いがあると思いますが、私は、蚊取り線香の匂いが、実家に結びつく匂いの一つです。昔は蚊取り線香だけしかありませんでしたが、昭和50年頃から電子蚊取り器も登場し、蚊取り線香は、昔懐かしいものになっていきました。今となっては、網戸も普及し、蚊取り線香を使う家は、田舎の網戸も入っていない窓を開け放す家ぐらいだと思います。私は、今でも夕涼みする時は、蚊取り線香をそばにおいて、夏の夜のひとときを過ごします。
二つ目の思い出の中の匂いは、線香の匂いで、いつも実家の仏壇から座敷中にただよっていたものです。線香も厳密に言えば、香の材料となるものが多種多様ありますが、父は長年白檀のものを好んで使っていました。全国各地にある有名なお寺へは、観光でよく寄りますが、靴を脱ぎ、本堂へ足を一歩踏み入れた時には、懐かしい線香の匂いで、ホッとし、心の故郷へ帰ったような気がします。
三つ目の思い出の中の匂いは、実家の母の和箪笥に入れてある匂い袋から、にじみ出ているお香のいい匂いです。旅行のお土産に、子供達に匂い袋を買ってきてくれたりして、子供達も、小さい時からお香の匂いが大好きになりました。
振り返ってみれば、私の思い出の中の匂いは、みな実家に結びつくものばかりです。子供達は、蚊取り線香の匂いは、小さい時から「おじいちゃん、おばあちゃんの家の匂い」と、言っていました。実家を離れて四十年近くなりますが、子供達の実家となる、我が家の思い出の中の匂いは、何なのか、あるのかないのか、子供達がどう言うのか楽しみです。
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