今年の夏は、珍しく二週間も田舎で過ごします。田舎の朝は、とても早く、そしてにぎやかに始まります。5時半頃から、セミたちの合唱が始まります。窓を閉めきった部屋の中まで、その大合唱は聞こえます。セミたちの短い一生を思うと、うるさいほどの鳴き声にも、腹を立てることなく、逆にしみじみ聞き入ってしまいます。
庭にはいろんな生き物がいます。たくさんのコオロギの赤ちゃんたち、殿様ガエルに雨ガエル、小さなトカゲ、トンボ、糸トンボ、赤とんぼ、ちょうちょうも飛んできます。白セキレイも来ます。そして大木には、いろんな種類の鳥がいます。つい先日まで、カラスが大きな巣を作り、子育てをしていました。ヒヨドリ、ムクドリ、鳩も来ます。黄金虫もいます。私が子供だった頃は、キジの親子も来てくれました。まるで宝石のように美しい玉虫も住んでいました。玉虫は年々減少していき、そう簡単には見ることができなくなりましたが、たまに、玉虫のあのきれいな羽根が落ちていることがあるので、少ないながらも生息しているようです。父が玉虫のきれいな羽根を、大切にお財布に入れ宝物にしていたのを思い出します。私も、今度玉虫の羽根を拾ったら、父の真似をしてお財布に入れたいと思っています。
夕焼けもきれいです。夕日が沈んだあとの残照にも、心うばわれ、しばしの間、見入ってしまいます。星が出始め、たくさんの星を眺めていると、宇宙へと思いは広がります。行き交う飛行機も見えます。国内線、国際線、飛行高度が違うのでよくわかります。あの飛行機に乗れば、世界中のどこへでも連れて行ってくれる。そう考えると、世界が身近に思えます。亡き父は、夏の夜は、庭に縁台を出し、縁台に寝転び、蚊にさされないようにうちわをパタパタ動かし、寝る前のひと時を過ごしていました。「飛行機が、あっちへこっちへとたくさん飛んでいくものだ」と言っていたのを覚えています。戦争を経験した父は、若かりし頃、満州にも住んでいたので、遠い異国を思い出すこともあったのではないでしょうか。
よしずが倒れるほどの風も吹き、まるで高原の別荘地にいるような気分を味わわせてくれます。今、私は、懐かしい思いで、田舎の夏を楽しんでいます。
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