先日DVDレンタルで「92歳のパリジェンヌ」を観ました。タイトルから面白く可笑しい物語を想像していたのですが、フランスの高齢者問題を取り上げたものでした。実話に基づくものです。
映画は、92歳の女性がパリの雑踏の中で車を運転するシーンから始まります。操作にミスを起こし立ち往生してしまいます。毎日の生活の中での行動をメモ書きした項目の「車の運転」に、線が引かれます。彼女は長年産婆さんをしてきました。社会活動に積極的に取り組み、デモにも参加していました。息子と娘は、結婚して家族を持ち別に暮らしています。夫亡きあとは一人暮らしです。高齢になってからは、家政婦が通いで来てくれています。
30年ほど前から決めていたことがありました。自分のことが出来なくなったら、その時は命の最期の時、自分の意思で人生にピリオドを打つというものでした。排泄問題も生じてきます。動きにも制限がかかってきます。小火も起こします。皆が集まり、92歳の誕生パーティーが開かれました。息子、娘、それぞれの家族、孫もいます。その席で、彼女は発表します。息子、娘は、母の考えにショックを受けて、猛反対します。息子は、母の希望を受け入れられず、最期まで猛反対を続けます。娘は、始めは猛反対でしたが、母に寄り添っているうちに理解できるようになっていきます。娘は母を「信念の人」と捉えていました。強い信念を持って生きてきた母は、どんなに反対されても必ず自分の信念を通す人だとわかっていました。子育ての時代の母の姿が、オーバーラップされます。母とのいろんな思い出のシーンが、よみがえります。母の気持ちに寄り添い、支援する立場に変わっていきます。トイレで立ち上がれなくなった時には体の自由がきかなくなり、小火を起こして入院します。病院では心臓発作を起こし最期の時を迎えるはずだった男性が登場します。救急救命医療により命は取り留められましたが、男性は「死ぬ機会を奪われた、機械の力で生かされる」と、嘆きます。医師とのやりとりもあります。彼女は「もう助けてほしくない。私は最期の時を迎えたい」と訴えますが、医師は「法を冒すことはできません」と、突っぱねます。高齢者患者たちの合唱が流れてきます。「私達は、早く旅立ちたい」と歌います。
娘の支援を受けて、人生最後の思い出作りを実行します。大切な品々の整理、片付けを、着々とこなしていきます。いよいよ最期の時です。娘家族は、母からの最後の電話を待っています。「いろいろとありがとう。家族を大切に」との最後のメッセージです。息子は、車の中で最後まで苦しみ続けています。安楽死ではなく、自殺ほう助でもなく、92歳のパリジェンヌは、自分の意思で信念を貫き旅立ちました。考えさせられる映画でした。
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