今から10年前のことです。私が所属しているボランティア団体の代表をされている男性が、自分史についてよくお話しされていました。
その方は、大手企業で300人近い部下を率いて先頭に立って働き、海外でも長年仕事一筋で活躍されてきました。60歳で無事に退職の日を迎え、夢に見ていた待望のサンデー毎日がスタートしました。大好きだったゴルフ三昧の贅沢な暮らしです。何の不自由も文句も無い日々が続きました。ところが1年もたたないうちに、心の中に隙間風が入ってくるようになり、人に勧められ自分史を書くことになったそうです。巻き物になっている障子紙を購入し、小筆で丁寧に自分史を書き始め、何とか現在地点迄筆をすすめました。そこまで自分史を書いて、60年の人生を振り返り、いかに自分が企業戦士として仕事人間で生きてきたかを、改めて思い知ったと言われます。その上でこれから先の人生を思った時、何をしてどのように日々を過ごしていくか、真剣に考えいろいろ迷ったそうです。自分史を書いてみて、なおいっそう将来、限られた自分の人生の先を見つめ、考えるきっかけになったとおっしゃいます。そこで辿り着いたのがボランティアの世界です。「他者のために何か自分にできることがある」その思いにつき動かされ、当時住まわれていた近畿地方から東京へ日帰りで、勉強に週一度1年間通われました。夜行バスで東京に早朝に着き、1日大学で講義を受けて、又夜行バスで帰られました。年金暮らしの身には、新幹線利用の交通費は高過ぎて、まして目的はボランティアということでなおさらです。そして資格を取り、ご夫婦でボランティアをこつこつ始められました。高齢者施設や病院のホスピスを訪問し、人の悩みや苦しみを聴く傾聴ボランティアです。施設や病院を自分の足で訪ね、傾聴させてもらえる場をどんどん開拓されていきました。私がその会に入った10年前で、すでに会員は30人ほどおられました。企業戦士、仕事一筋に生きてこられたこの方は、自分史を書いたことによって新しい生き方を見つけられたのです。
今では自分史を書くノートや本が、たくさん書店に並べられています。自分史を書くことは、今迄の自分を見つめなおし、これから先の自分を考えるよい機会になるようです。「自分史を書く」という自分史の勧めをこの代表から教えてもらいました。
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