2012年11月2日金曜日

「あいちゃんのお庭」 (2)


その時、ピョンタが「去年のあの日のことは、いつまでも忘れないよ」ポツリと言いました。去年のあの日、ピョンタのお母さんが、土の中から出てきたところを、突然空から舞い降りてきたカラスに、連れ去られたのです。あっという間のできごとでした。カラスは、ピョンタのお母さんを口にくわえて、空高く飛んで行ったのです。三人にとって、つらく悲しいできごとでした。あの日以来、あいちゃんは、ピョンタをカラスから守るために、石やレンガを並べて、カラスに見つからないように、気をつけているのでした。

 小さなお庭には、メダカもいます。たくさんのアリくん達もいます。ミミズくんもいます。タンポポもチューリップもパンジーも、色とりどりにお庭を飾ります。春の始めの悲しみを、お庭のお友達は、ピョンタをなぐさめ、励ましてくれました。 

 あいちゃんのお家の横に、小さな川が流れています。六月になると、美しいお友達が登場します。ホタルくんとホタルちゃんです。小さな川からお庭へ飛んできて、夜のパーティーが始まります。あいちゃんとコロ、ピョンタは、うっとりして、ホタルくんとホタルちゃんのダンスに、見入っています。本当に短い日々の、つかのまの楽しみです。 

 夏がやってきました。セミくん達の大合唱が始まります。あいちゃんもコロもピョンタも、セミくん達と一緒に、大きな声で歌います。あいちゃんのお家の小さなお庭が、いちだんとにぎやかになります。コオロギ家族のお出ましです。今年生まれた赤ちゃん達が、ぴょんぴょん元気よく跳びはねています。子供たちが、楽しく歌い出す頃には、バッタさん家族も仲間入りです。トンボも飛んできます。赤トンボもいます。
 
                         つづく
                                

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