私は伊勢の国に生まれ、伊勢の国で育ち、大阪で音楽を学び、伊勢の国へ戻り音楽教師として働き、結婚して奈良に住み、夫の仕事で東京、三重、大阪、京都、岡山を回り、現在は京都に落ち着き時々三重へ行く暮らしをしています。その土地々でそこに暮らす人達の方言を聞いて、言葉の面白さに気づき、興味を持っていました。人の話す言葉には敏感になっていた私ですが、先日娘から「お母さんの話す言葉はどこの言葉?」と言われ、自分の口にする言葉について少し注意するようになりました。するととても面白いことがわかったのです。私の親や兄弟が使わない言葉を、私はしょっちゅう口にしていたのです。娘は以前から不思議に思っていたと言います。娘に指摘されて、私は無意識でしゃべっていた言葉に、今笑いころげています。いくつか紹介します。
「・・・さんす?」 標準語で「・・・されますか?」
「飲まんす?」 標準語で「飲まれますか?」
「行かんす?」 標準語で「行かれますか?」
「行かんした?」 標準語で「行かれましたか?」
動詞のうしろに「んす?」がつく活用形です。
「歩く」→「歩かんす?」
「走る」→「走らんす?」
「働く」→「働かんす?」
「行く」→「行かんす?」
「飲む」→「飲まんす?」
「する」→「さんす?」などです。
これらの私が普段無意識に口にしている言葉は、いつどこで身につけたのか全く記憶がありません。親や兄弟が使わない言葉であれば、家庭で覚えたというわけではありません。ところが先日ビッグニュースが飛び込んできました。「お母さんが言っている言葉と同じのを今日聞いたよ!」と娘の報告です。娘が働いている地域では、私と同じ言葉がわりと使われているようなのです。私の故郷より、もう少し南の地域とのことです。娘の話によれば、私と全く同じ言葉の人と、うしろに「ん」がつく人の二種類があるそうです。
「さんすん?」「飲まんすん?」「行かんすん?」などです。自分が気づかず、無意識で言っていた言葉の誕生地かもしれません。これからの調査研究対象ができました。
私が話す方言はどこで身につけたのでしょうか。よく考えてみると、故郷でしか使っていないように思います。友達、従姉妹、姉、家族など、親しい間柄の中で、無意識に使っている言葉です。あちこちへ移動して暮らしましたが、それぞれの土地で私はよそ者として、標準語で話していました。標準語といっても、イントネーションは関西人のものです。田舎から出てきた自分を、変身させ、少しすましていたのかもしれません。岡山では「じゃろ」が、京都では「しはる」が有名ですが、自分が無意識に使う方言に、今さらながら気づき笑いころげています。
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