2012年10月27日土曜日

「ぼくは指揮者」 (3)

そのあとも、我が家の楽しい合奏団の演奏会は、一週間に一度は開催された。

 ぼくは、時々体操をする。手をうんと伸ばしたり、足を大きく動かしたりする。するとお母さんは、大きな声で「みんなみんな、来てちょうだい」と、みんなを呼ぶ。みんなは喜んで「あっ動いた」「元気に動いているよ」と一騒動が起こる。

 ぼくは、みんなの声がよく聞こえる。お母さんの声、お父さんの声、お兄ちゃんの声、お姉ちゃん達の声、そしておじいちゃんおばあちゃんの声、もちろんタロやミーの声もよく聞こえる。

 ぼくは、どんどん大きくなって、お部屋がずいぶんきゅうくつになってきた。そろそろぼくのお部屋は、風船がはじけるように、パーンとわれそうだ。お母さんの方のおじいちゃんが、天国へ行ってしばらくして、ぼくのお部屋は、はじけた。本当におじいちゃんと、入れ替わりのようにだ。

 家族みんなの大歓声の中、ぼくは、大家族の仲間入りをした。みんなの声は、ずいぶん前からよく知っているなじみの声だけど、顔をあわすのは初めてだ。

 ぼくは、
  「初めまして! どうぞよろしく!」と、ニコッと笑った。

おわり

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