2017年4月11日火曜日

尊厳死

 先日知人の従兄弟の奥さんが脳死と診断されました。就寝中に異変が起こり、すぐ救急車で病院へ運ばれましたが、回復できませんでした。知人はその前日にも会って、いつも通りの会話を交わしています。就寝前までは、何の異変もなかったのです。六十二歳でした。
この話を聞いて、すぐに尊厳死のことが頭によみがえりました。今から二十五年ほど前のことです。きっかけは忘れてしまいましたが、世の中で尊厳死が話題になり、テレビには専門家が登場し、尊厳死についていろいろ話していました。新聞でも大々的に取り上げられていました。その時に少しかじった程度の知識ですが、日本には尊厳死協会があることと、尊厳死の宣言書を書いて、その旨を家族に伝えておくことというものでした。当時私は人生の朱夏の真っ只中であり、仕事と難しい年頃の子育てにあわただしく毎日を過ごしていました。それらの情報を得て、とてもいいことだから自分も見習おうと頭では思っていましたが、実行せずに二十五年も過ぎてしまいました。知人の話を聞いて早速行動に移ろうと思い、ポアロに話したところ、彼はすでに用意してあると言うのです。そして見せてくれました。驚きです。単身赴任が八年も続き、東京暮らしをしていた頃に書いたとのことです。私はその文章を書き写し、年月日、住所、氏名、そして捺印しました。すぐに出来上がりました。あとは家族(娘)に伝えるだけです。脳死状態になって自分の意志を伝えることが不可能になった時、あるいは病の最期に向けてのステージで選択を迫られる時など、自分はこうしたいという意志を書き残しておくことはとても重要だと思います。自分の命についての覚悟と責任を、自分が負いたいと思うからです。家族が悩み苦しむことを避けたいと思うからです。本人の意志が第一優先です。本人の意志が尊重され、第一決定権になるべきだと思います。

「尊厳死の宣言書」

*私の病気が、現在の医学では、不治の状態であり、すでに死期が迫っていると判断された場合には、いたずらに死期を延ばすための延命措置は一切お断り致します。
*ただし、この場合、私の苦痛を和らげる処置は最大限に実施してください。そのため、例えば麻薬などの副作用で、死ぬ時期が早まったとしてもいっこうに構いません。
*私が数か月以上に渡って、いわゆる植物状態に陥ったときは、一切の生命維持装置を取り止めてください。


*五木寛之「人生の四季」
   青春・・・青年期
   朱夏・・・人生の真っ盛りの時期
   白秋・・・中年期を過ぎて人生は秋

   玄冬・・・高齢期・老年期

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