長寿大国となった日本の高齢者介護の社会化について、私の思うところを書いてみようと思います。
家族の形や、高齢者と家族の関係も、時代や社会が変化する中で、変わっていくものですが、家族介護が困難・不可能になり、高齢者介護が、私的介護から公的介護へと移行せざるをえない理由として
1.大家族から核家族への変化
2.地域コミュニティの希薄化
3.女性の社会進出が進んだことによる家族の介護機能の低下
4.子どもとの同居率の低下
5.短命社会から長命社会への急激な変化(要介護高齢者の増加、介護期間の長期化)
があげられます。
その背景として、農業、林業、漁業などの第1次産業を中心とした産業のあり方から、第2次産業、第3次産業などを中心とした産業へと、大きく変化した高度経済成長があります。このことは、家族のあり方に大きな影響をあたえました。産業構造の変化の中で、人々はふるさとを離れ、都市へと仕事を求めて移り住み、工場や会社などで、賃金労働者となっていきました。そこで結婚し家族を形成しましたが、それは夫婦と子供だけの小規模な家族、つまり核家族です。男性が外で働き、女性が家庭内の家事育児を行うという、性別役割がより強固になり、専業主婦率が高くなりました。
平均寿命が延び、高齢者を取り囲む家族のあり方が変化し、地域の相互扶助のネットワークからも孤立しがちな状況で、高齢者の介護を、家族だけで行うのがいかに難しいか、高齢者介護の問題が社会問題となりました。女性も性別役割のあり方に疑問を持ち始め、老親の介護を、女性だけが引き受けることを期待することは、難しくなりました。かつては家庭の中で行われていた、出産、育児、高齢者介護、死の看取りなどは、家庭の外に出て行き、専門家や専門施設に委ねられるようになり、家事機能の外部化、家事機能の社会化という現象が起きてくるようになりました。
私は、8人家族の大家族で、地域の人々との絆も強く、祖父も祖母も自宅で見送りました。家庭の中での親の介護は、父が一人っ子だったため、母の背中に重くのしかかり、子どもだった私の目にその大変さがしっかりとやきついています。
日本の社会の変化を知っている者にとって、高齢者介護の社会化は、いろんな面で良いことだと考えます。これからの課題は、高齢者の心をどのようにケアしていけるかということです。現在、お話を聴くボランティアとして、多くの高齢の方々に接していますが、そのことを強く感じています。
つづく
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