2016年2月25日木曜日

十年の歳月

 以前傾聴のボランティアで一緒に活動した友人に久しぶりに会いました。毎年の年賀状でのあいさつと、時々電話でおしゃべりする友人です。八十歳を超えておられる人生の先輩です。電話で話されるお声は、いつも若々しくお元気で年齢を感じさせません。十年ぶりに会って一緒に食事をし、おしゃべりしようということになり、先日出かけました。大阪と京都のちょうど境目に住んでおられるので、京阪四条駅のそばにある南座の前で待ち合わせることにしました。私は10分前に約束の場所に到着しました。南座の前に年配の小柄な女性が一人立っておられましたが、私はその方が友人だとは気づかず、南座のポスターをキョロキョロ見たりして、京阪四条駅から友人が出てこられるのを今か今かと待っていたのです。そうしているうちに約束の時間となり、いよいよ友人が来られると思ったその時、年配の女性が突然私に話しかけてこられました。「待ち合わせするのも難しいですね」とおっしゃったのです。その声を聞いて私はびっくり、その人が友人だったのです。二人が同時に手を取り合って、大きな声をあげました。十年の歳月が流れたのは事実ですが、お互いにわからなかったことが驚きでありショックでした。私も小柄ですが、以前は私より少し小柄という友人が、とても小さくなっておられて、とても華奢な体だったのです。それから積もる話をしながら、岡崎方面へ向けて歩きました。私は、最近オープンしたばかりの京都ロームシアターへ案内しました。八坂神社、円山公園、知恩院、青蓮院、の前を通り、平安神宮のそばの京都ロームシアターへ向かいました。京都ロームシアターは、館内にゆったりしたスペースで、くつろぎのイスやソファーがたくさん用意されています。自由に出入りできて、誰でも利用できます。
 友人の小さい華奢な体は、つまずいてこけたら大変です。私は彼女の腕を組み、気をつけて歩きました。電話でのお声通り、お話しされる声はとても元気です。散策は好きで、2時間ほど歩くのは何ともないとおっしゃったので、おしゃべりしながら歩きました。京都ロームシアターで、ゆっくりした時間を過ごし、ちょうどお昼になったので、食事をすることにしました。館内のレストランのメニューを見ると、洋食ばかりです。「できることなら和食がいいわね」とのことで、また少し歩いて和食の店へ入りました。この日は平日で、お店はすいていました。私達は食事をしながら、そして食事がすんだあとも、ずっとおしゃべりをしました。気が合う人間同士は、考え方も生き方もまあまあ似ているのだと思いますが、彼女はしっかり者で行動力があり、仕事をバリバリこなし、その功績の褒賞を受けて、アメリカへ二度も招待されています。六十歳で夫を見送ったあとは、ボランティア活動に燃え、単独での海外旅行へもたびたび出かけられ、訪問した国は20ヶ国ほどです。彼女の生き方を聞いて、私はいつも感心し、自分はそんなことはできないと思い、「すごい、すごい」とエールを送っていました。
 人生の最終ゴールに向けての彼女は「最期まで自立していきたい、そろそろ終活をしないとね」とおっしゃいます。一人娘さんは家庭を持ち、遠いところで仕事、子育てに奮闘中です。娘さんは嫁がれているので、友人は「お墓も仏壇もどうするかを決めて何とかしなければね。これも終活ね」とおっしゃいます。
 いつも思うことですが、毎日毎日、一日一日は点となり、それがひと月、半年、一年と連なり、いつのまにか十年が過ぎたということです。十年の歳月を経て、五時間ほどのデートでしたが、「お元気で、また会いましょうね」と、京阪三条駅で友人を見送りました。

0 件のコメント:

コメントを投稿