2015年11月16日月曜日

大江能楽堂(能鑑賞)

 先日買い物に出かけた帰り道、押小路通りの大江能楽堂の前を通りました。以前ブログで紹介しましたが、機会があればぜひ一度能の鑑賞をしたいと思っていた私達に、偶然そのチャンスが訪れました。大学の能研究会の発表会です。「ご自由にお入り下さい。入場無料」と書かれたポスターが貼られています。プログラムを見ると13:00~18:00まであり、いくつかの大学の能楽研究会の「仕舞」がいくつかあり最後にプロが主体の「能 胡蝶」とあったので、夕方にかけて観に行きました。能の一つ前には、当主である七世大江又三郎氏の番外仕舞があり、プロ中のプロの舞を観ることができました。



 大江能楽堂の前はいつも通っている私ですが、中へ入るのは初めてです。通りからは想像できない立派なものです。履物を脱いで上がり、長い廊下を進みます。大江能楽堂は、明治41年に建てられたもので、創建100余年です。個人所有の能楽堂では、京都で一番古いものだそうです。幾度かの改修をされていますが、同じ場所で創建当時の趣ある風情を伝えています。大江能楽堂では、年四回大江定期能が行われています。一階二階の桟敷席は、一部椅子席含み400席あります。舞台正面に老松が描かれており、円山応挙の六代目の子孫の手によるものだそうです。舞台の四隅に大きな柱があります。能面をつけると視野が極端に狭くなり危ないので、柱で自分の位置を確認するそうです。能舞台に緞帳はありません。能は舞台と客席が同じ空間にあります。
  


 能は室町時代に将軍足利義満の庇護のもとで、観阿弥、世阿弥親子が完成させました。600年以上も途絶えることなく伝えられており、2001年ユネスコの世界無形文化遺産となっています。江戸時代には幕府の公式行事などで演じられる芸能となり、観世・金春・宝生・金剛・喜多の五流が定められました。大江家は観世宗家の流れをくんでいます。能は面(おもて)をつけて演じられます。能の物語は約200話あり、大きく五つのジャンルに分かれます。
  神さまを主人公とした「神」
  おもに源氏や平家の武将の亡霊を主人公とする「男」
  古典物語のヒロインや草木の精霊など美しい女性が登場する「女」
  狂乱状態にある女性が主人公だったり、敵討ちなどドラマチックなテーマのものを「狂」
  鬼・天狗・妖怪など人間以外を主人公としたものを「鬼」と呼びます。
私達が観たのは「胡蝶」でした。シテ(主人公)は蝶の精霊です。ワキ(相手役)は旅僧でした。間(説明役)は侍でした。八人の地謡と四つの楽器(笛・小鼓・大鼓・太鼓)と三人の登場人物とで、一つの舞台を作り上げる素晴らしさを観せてもらいました。中でも朗々とした声量のセリフ、囃子方のテンポよさと気合が観ている私達を舞台へ引き込む素晴らしいものでした。まさに幽玄の世界の境地でした。演技中は撮影禁止なので退場の場面を少し撮らせていただきました。

蝶の精霊が退場する場面、2階席も映っています

旅僧が退場、中央にあるのが梅の花

小さなくぐり戸から、地謡の退場、1時間の正座は辛そうです


父が能面作りに夢中になっていた頃、いくつもの能面を完成させ、氏神様へ奉納し、子供達にも届けてくれました。私の手元には小面と翁があります。私は子供の頃に、何度か父のお伴で能を観に行きましたが、わけもわからず観ていた能が、味わい深い奥深いものだということを今頃になって知りました。

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