三十年前の書類が入った紙袋の中に、当時私が書いた原稿がありました。雑誌へ投稿した下書きです。不採用となり雑誌には載りませんでしたが、その頃の私の思いや考えが書いてあるので今読むと面白いです。
タイトルは「専業主婦の憂鬱」です。
結婚してから東京へ引っ越すまで、私はずっとピアノ教師をしてきました。二人の子供の故郷出産で少し休んだ期間もありますが、概ね続けてきました。専業主婦の経験がありません。突然の転勤で東京へ引っ越した私は、初めての専業主婦になり、どことなく落ち着かない思いと戸惑いを感じました。夫を会社へ見送り、子供達を学校へ送り出すと、自分一人の時間です。さて何をするか。専業主婦の仕事はたくさんあります。無限大です。評価もさまざまですが、百点満点を取る人がいる以上、劣等生でも上を目指さねばなりません。その時代々で社会の考え方や取り方は違いますが、私にはプレッシャ-がいつも大きくのしかかっていました。人には得手不得手があるのだから何も完璧な専業主婦を望まなくてもよいものを、私は自分で自分を追い込んでいました。朝から家事をして、これでよいということになりません。家事には終わりがないのです。終わりのない家事は精神的に疲れます。家事の苦手な私は、ついつい自分の好きなこと没頭できることに逃げてしまいます。その一つが書くことでした。何もかも忘れ没頭し、あっという間に時間が過ぎて、子供達が学校から帰ってきます。子供達が帰宅してからは母として主婦として、夫が帰宅すると妻業も重なり、もう自分一人の時間はなくなります。そんな暮らしをほんのしばらくしていましたが、社宅だった為に、私がピアノ教師ということがすぐに広まり、子供に教えてほしいという人が出てきて、ピアノの生徒がどんどん増えていきました。
専業主婦の大変さを痛感している私は、今度は仕事に逃げました。仕事を持つということは、完璧な専業主婦を目指さなくても認めてもらえます。完璧な専業主婦に自分はなれない、向いていない、なりたくない、専業主婦ってしんどい、嫌いということになったのです。そんな私がず-と仕事を続けてきて、最近仕事から離れ専業主婦になりましたが、やっぱり専業主婦はしんどいと、今はブログに燃えています。ブログに逃げています。家事は最低限しかしていません。といっても得手不得手に関わらず、好き嫌いに関わらず、しなければならないというものもたくさんあります。しなければ家庭経営は成り立ちません。最近は専業主婦に憧れるという女性も増えてきていると耳にしますが、結局は自分に合った道を進めば「それがいい、それでいい」のだと思っています。
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