信じられないような体験をしました。うそのような本当の話です。それは11月のことでした。叔母の49日の法事に、夫婦で出かけた帰り道のことです。ずいぶん遅くなり、少しでも近道をしようと思ったことが、不思議な体験につながることになったのです。
琵琶湖の東に位置する彦根市から、三重県に向かって国道を走っていました。鈴鹿峠を越えなければなりません。国道1号線に出るのに近道だということで、最短距離で1号線に抜ける道を選び、走り続けました。時間は夜の10時を過ぎ、両側に民家が続くその道をどんどん走りました。だんだん民家が少なくなり、ついに集落は終わり、山道になっていきました。「この道を選んだのは、間違いだったかもしれない」と二人で話しながら、それでも、もうそこから戻ることは時間のこともあって、無理だと判断し、恐る恐るこわごわ前へ進みました。もう山の中です。こんなところから国道1号線へ出られるのかと、半信半疑です。大木が立ち並び、うっそうとしています。この道を夜遅くに通る車はなさそうです。私達は、早くこの山の中を通り過ぎたいと、あせり始めました。
その時です。突然目の前にたくさんの小さな明かりのようなものが、現れたのです。すぐには、それが何かわかりませんでした。よく見ると、真っ暗な中に、たくさんの動物がいて、小さな明かりのようなものは、動物達の眼でした。数えられないほどのたくさんの動物が、まるで夜中のパーティーをしているかのように、集まっているのです。シカ、ウサギ、さる、カモシカ、フクロウ、本当にたくさんの種類のたくさんの動物や鳥達が、私達の車のライトの中に登場しました。私達もびっくりしましたが、彼らも、まるで「だるまさんがころんだ」の鬼が、後を振り向いた時にピタっと静止するように、動きを止めて立ちつくしているのです。夜中のパーティーに訪問者があるとは、さぞかし驚いたことでしょう。夜中にその道を通る車などなく、車のライトを見たのも初めてのことだったかもしれません。私達も、彼らも、一瞬たじろぎましたが、私達は、その場を静かに通り抜けようと、速度を落とし静かなエンジンで進み出しました。すると私達の車の前を、ウサギがピョンピョン道案内するかのように、跳び始めました。私達は、その後ろをそーっとそーっと進みました。「ごめんなさい。夜中のパーティーのおじゃまをしました」とつぶやきながら、そーっとそーっと進みました。
驚くことに、動物達と出会ったところから、10分もかからずに国道1号線に出たのです。思わず二人が顔を見合わせました。「今のは何だったの、まるで桃源郷のようね」「そうだパラダイスだ」と話しながら帰りました。
人間の住んでいる場所がどんどん広がり、動物達の生きる世界が隅へ隅へと追いやられている現代ですが、人間のすぐそばで、動物達が楽園を保ち続けていることに感動しました。この話をすると、みんなが「そこへ行ってみたい、連れて行って」と、感嘆の声をあげます。
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