いつでもどんな時でも大きなジェスチャーと大きな声があがります。私達二人の日本人は、静かにみんなのあとをついてバスに乗りました。これでやっと知人の待つモンペリエへ帰れると思い、本当にホッとしました。雨は一向にやみそうにもありません。激しく降る雨の中、高速道路を南仏のモンペリエまで走ります。
バスの運転手は、若い男性です。私達は、前から三列目の席に座っていたのですが、いつからともなく、人が入れ替わりに運転手のそばへ来て、大きな声でしゃべるのです。緊急事態発生で、激しい雨の中、隣国とはいえ外国へ向けてバスを運転するのです。にぎやかなスペインの人達が、同胞の運転手を励ましているのです。緊張し硬くなっている運転手に、面白いことをしゃべってリラックスさせようとしています。だんだんモンペリエが近づいてきました。高速道路を出てモンペリエの町へ入り、モンペリエの駅へ向かうのですが、モンペリエも豪雨だったようで、道路があちこち冠水しています。多くのスペイン人達は、モンペリエへ出稼ぎに来ている人達で、バカンスを故郷で過ごす為に母国へ帰っていたようです。モンペリエの町のこともよく知っていて「この道がダメなら、あっちの道へ行こう」と運転手を案内しています。
やっとのことでモンペリエ駅へ到着しました。バスに乗っていた人達から、歓声と拍手が起こりました。「運転手さんありがとう。本当にお疲れ様でした。」150キロほどの、2時間強のバスの旅でしたが、距離も時間も、もっともっと長く感じられました。
夜中の3時です。駅周辺もあちこち水に浸かっています。フランスの軍隊も警察も出ています。私達は、知人に連絡したくても、携帯電話を持っていません。途方に困り、うちのポアロ(夫)は、若い警察官に「1分だけあなたの携帯電話を使わせてほしい」と頼み、何とか知人に連絡がとれ、駅まで迎えに来てもらえました。道路冠水の為、遠回りしなければならず、知人の家から駅まで、通常の三倍ほどの時間がかかりました。
生まれて初めてのスペインへの旅の帰りに遭遇したこの経験は、思い出深く、民族性も知ることができ、貴重な体験となりました。スペインの人達のたくましさ、厚い人情、人なつっこさを目の当たりにして、スペインという国、スペインの人達が、好きになりました。これをドキュメンタリーとしてフィルムを回していたら、どんなに素敵な作品が出来たことでしょう。
モンペリエ駅
追記 ヨーロッパの金融不安の中、スペインも現在大変な状況ですが、何とか少しでも早く安定する日が来ることを、遠くから願っています。
おわり
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