昔から「這えば立て 立てば歩けの親心」と言われてきたように、子を思う親の心は、言葉で言い尽くせないほど、広く深く、その愛情は、見返りを求めない、純粋な無償の愛です。子の命、新しい命が、自分の体の中に芽生えた時から、一人の人間であると同時に、子の親として、愛情、責任、義務をしっかりと認識し、人生を歩み始めます。まさに「這えば立て 立てば歩けの親心」です。子が一年一年と成長するのは楽しみですが、当の親は、本当に必死に子育てをしているので、無我夢中の毎日です。そして子が、親元から離れて行く日が来るのです。子の巣立ちです。親としての責任、義務を果たし、肩の荷が下りたようで、ホッとするのは事実ですが、嬉しいというより、心にぽっかり穴があいて、寂しさがつのります。空の巣症候群です。子が成人し、社会人になり、一人の人間として生きていくのを、親は、子の幸せを願い祈り、遠くから見守っているのです。
自分が、子の立場から親の立場になった時、親の愛情の広さ深さ、子を育てる大変さが身にしみ、ただただ親に感謝するのみです。最後の別れのその時まで、できる限りの孝行をしようと思っていましたが、その時は、本当に突然やってきました。母は心筋梗塞で、父は入院中痰が喉につまり、あっけなく永遠の別れとなりました。「孝行のしたい時分に親はなし」と、昔からよく言われていますが、立派に育ててもらって、自分も親となり、次世代を担う子を無我夢中で育てている間に歳月は流れ、そろそろゆっくり親と向かい合えると思う頃になると、親は旅立って行くものなのですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿