先日テレビを観ていて遠い記憶がよみがえりました。NHKのドキュメンタリー番組「足元の小宇宙」です。絵本作家の甲斐信枝さんに密着したドキュメンタリーでした。番組が進行する途中で思い出しました。彼女の描かれる絵に見覚えがあることを思い出しました。娘達が幼かった頃に毎月とっていた本の中に、彼女の作品が数冊あることを思い出したのです。
甲斐信枝さんは現在八十五歳で、現役の絵本作家です。子供の時から自然が大好きで、野原をかけめぐり遊んだそうです。大人になって働きながらデッサンを学び、四十歳で絵本作家として独立されました。大自然の中に生きる小さな生き物たちに心ひかれ、自身も自然の中に身を置いて、熱心に観察し描き続けてこられました。小さな生き物たちとは、虫ばかりではありません。植物も小さな生き物です。彼女の得意とする観察力はすごいものです。時間をかけて彼らに寄り添い、どんな小さな変化も見逃しません。
1976年発行の「きゃべつばたけのいちにち」には、きゃべつときゃべつに集まる小さな生き物たちが描かれています。あおむし、あり、とのさまがえる、くも、もんしろちょう、べにしじみ、あしながばち、よとうむし、かたつむり、なめくじ、むかでなどたくさんの小さな生き物たちが登場します。お話には甲斐信枝さんの優しい眼差しがあふれています。
1979年発行の「みのむし」は、冬春夏秋冬の季節を通して一年間のみのむしを追跡したものです。大人でも知らなかったことを、絵本は教えてくれます。
1982年発行の「こがねぐも」は、作者自身がこがねぐもと一緒に生活したお話しです。くもがどのようにあみをはり、どのようにえさをとるのかが、細かい描写で描かれています。くものあみの横と縦の違い、おすとめすの違い、おすとめすの関わり方、出産、こぐもたち、など知らなかったことばかりです。こがねぐもがおさしみを食べるという場面には驚きました。
1985年発行の「雑草のくらし」は代表作で、三十年以上たった今も版を重ねるロングセラーです。五年の歳月をかけてあき地を見つめ続けた、雑草の栄枯盛衰のドラマです。大人も子供も感動するお話です。
現在甲斐信枝さんは、京都市嵯峨野にお住まいです。嵯峨野に広がる田園地帯で、元気に活動されているお姿にお目にかかれる日があるかもわかりません。楽しみです。
*我が家の小さな庭にも、たくさんの雑草が生えています。甲斐信枝さんの「雑草のくらし」を頭に思い浮かべながら、雑草たちとふれ合いたいと思います。
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