「ピーターラビット」の著者、ビアトリクス・ポター(1866~1943)の人生を描いた作品です。115年前のイギリスを93分の中で知りました。ポターは子供の頃から絵を描くのが大好きで、お話しを作っては空想の世界に浸りました。良家の子女であるポターは、その時代の女性の生き方に反発し、結婚のみの人生を拒み、自分の生きる道を模索し、作家として歩き出します。ポターの描いた作品は、少しずつ認められ、売り上げも伸びていきます。
順風満帆の人生と思われたポターですが、作家としてスタートした時から支えてくれた大切な人を突然失います。出版社を経営する家の三男が、ポターの作品を担当してくれていて、二人は恋愛関係になり、結婚を約束していたのです。あっという間の別れでした。彼は白血病で突然世を去ったのです。悲しみに打ちひしがれるポターは、作品を描くことも危ぶまれます。悲しみを乗り越え、苦しみを乗り越え、作品を描くことによって、大切な人を失った失意のどん底から立ち直ります。子供の頃から、湖水地方の別荘で家族とともに夏を過ごしていたのですが、その湖水地方で住まいを手に入れ、大自然の中で、作品を次から次へと生み出していきます。湖水地方の美しさは素晴らしいものです。一度は行ってみたいと思うほどの、自然がそのまま残されている場所です。
当時のイギリスは、産業革命とともに、湖水地方にも近代化の波が押し寄せ、自然が破壊されていくという危機的状況の中にありました。作品は売れ、有名な作家となり、経済力を持つことができるようになったポターは、湖水地方の自然を守るために立ち上がります。売りに出された農場を次から次へと買って、湖水地方を守り続け、最終的には国に寄付するのです。弁護士になっていた幼馴染みと結婚し、たくさんの作品を世に送り出し、湖水地方の大自然を守り、七十七歳で生涯を閉じます。ポターの偉業は、世界へと羽ばたき、世界の子供達に読書の楽しみと夢を届けています。自然を守り続けて、後世へ遺していこうというポターの考え、行動は、世界に広がり「自然保護ナショナル・トラスト」となって受け継がれています。ビアトリクス・ポター生誕150周年を記念して、2016年8月に原画展が日本で初めて開催されたそうです。
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