マギー・スミスさんの映画三本目は「パリ3区の遺産相続人」です。
パリ3区はパリ市のほぼ中央にあり、映画にはセーヌ川やおしゃれな雰囲気の街並みが映ります。六十歳を目前にした無一文の男性が、父からの遺産であるアパルトマンを処分しようとアメリカからパリへやってきます。
しかしそこには九十歳の老婦人(マギー・スミス)と娘が住んでいました。父が買い手、婦人が売り手の契約は、フランス独特の「ヴィアジェ」というもので、住宅ローンの代わりに売り主に毎月年金を払うというものでした。月々2400€(ほぼ30万円)を、婦人は四十年間受け取っていました。これは彼女が亡くなるまで続きます。
映画の展開とともに父親と婦人の関係がわかってきます。そのことが原因で母親は自殺しています。父親はフランスを愛し続け、家庭はうまくいっていませんでした。父親と息子の間は冷たく、疎遠になっていたのです。「ヴィアジェ」は運命のゲームであり(これは映画の中での発言)売り手がすぐ亡くなれば後を継ぐ運命ということになります。もし売り手が亡くならなければ、売り手の命を支える運命ということになり、父親の婦人への愛情が表れているように思います。アメリカから来た男性と老婦人の娘は、子供の時から傷ついて生きてきたお互いの人生を理解し合い、それが恋愛感情に変わっていきます。
パリ3区の邸宅の運命は、次の世代へと受け継がれて、映画はハッピーエンドで終わります。父親のことを少しずつ理解していく男性の心理が、うまく描かれていました。
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