ぼくは、公園へもどった。だんだん日が落ち、薄暗くなってきた。向こうから、女の人と大きめの犬が歩いてきた。優しい目をしたシェルティーだった。お父さんのような、お母さんのような、においを感じた。ぼくは、夢中でシェルティーに近寄った。「ああ、やっぱり、お父さんとお母さんのにおいだ。ぼくの探していたにおいだ」ぼくが近寄っていっても、シェルティーは怒らなかった。後をトコトコついていった。お父さんとお母さんのにおいから、離れられなかった。家までついていった。エサも水もミルクももらい一晩泊めてもらった。次の日、女の人は、警察や知り合いに問い合わせた。ぼくが迷い犬かもしれないと思ったようだ。ぼくが、話せたら、「迷い犬じゃないよ、捨てられたんだ」と、言いたかった。捨て犬らしいということで、もらい手を探してくれたが、いなかった。近所の人たちは、「保健所へ、つれていったら」と、言っているようだ。女の人は、ぼくをきれいにシャンプーし、ケガをした足に、薬を塗ってくれた。「この家においてもらえたらなあ」ぼくは、かすかに期待した。東京へ単身赴任をしているお父さんと、ピアノの先生をしているお母さんと、高校生の二人のお姉さんと、シェルティーの家族だ。ぼくは、家族のみんなを大好きになった。家族会議の結果、ぼくは、家族の一員になった。心の底から、この幸運に感謝した。
シェルティーは三歳上のお兄さん。名前は、レオ。「レオナルド・ダ・ヴィンチ」という偉い人から、名前をもらったそうだ。弟だから、ぼくの名前はナルド。
今日からぼくは、新しく生まれかわった。
あの日から三年が過ぎた。「今、ぼくは、家族の一員として、深い愛情と信頼の、強い絆で結ばれている」と、ボスに伝えたい。
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