2012年3月10日土曜日

「ぼくの名前はナルド」 (3)


ずいぶん歩いて、ずいぶん走って、ぼくは、とてものどがかわいていた。周りを見渡すと、小さな川が流れていた。水をガブガブ飲んだ。そして、お腹もすいていることに、気がついた。「そうだ、今日は、一日一回のエサも、もらっていなかったのだ」もっともっと水を飲んだ。お腹が、水でいっぱいになってきた。「さあ、頑張るのだ。絶対に家へ帰ってみせる」ぼくは、また走り出した。だんだん暗くなってきた。少し心細くなってきた。「頑張れ、頑張れ」心の中でつぶやきながら走った。どれだけ走ったのだろう。真っ暗な闇の中を、休まず走った。でも、家のにおいは、まだしてこない。真っ暗な闇の中を、トボトボ歩いた。前方に、かすかに明かりが見えてきた。やっと町が見えてきたのだ。ぼくは、嬉しかった。ホッとしたのか、疲れを、どっと感じたぼくは、道のわきの草むらに倒れこんでしまった。どのくらい眠っていたのだろう。目がさめると、夜が白みはじめていた。また、ぼくは、立ち上がり歩き出した。やっと町へもどった時、もう朝になっていた。その時、ぼくは、おじさんに、車に乗せられ、いくつもの町を通り過ぎて、やって来たことを思い出した。「町は町でも、この町は、ぼくの住んでいる町ではないんだ。たしか、三つの町を通り過ぎたはずだ。それ走れ走れ、ぼくの住んでいる町を目指して走れ走れ」一つ目の町を通り過ぎた。また夜が来て、朝になった。ぼくは、水を飲んでは、少し体を休め、一生けんめい、帰るべき家へと向かった。やっと二つ目の町を通り過ぎた。「ここまでくれば、もう大丈夫。家も、もうすぐだ」少し元気が出てきた。町の中をウロウロ歩いた。まだ家のにおいはしない。ずいぶん歩いたが、家へ続く道が、まだ見つからない。足が痛くなってきた。また日が暮れてきた。二つ目の町から三つ目の町までは、ずいぶん遠かった。一生けんめい走ったり、歩いたりして、足は、棒のようだった。三つ目の町に、たどり着いたのは、次の日の夕方だった。

               つづく

                 

0 件のコメント:

コメントを投稿