先日お亡くなりになった知人の医師から、紹介してもらった本を注文しておいたところ、届いたとの連絡を受けて早速受け取りに書店へ行ってきました。一気に数時間で読破しました。読み終えた私は、今興奮状態です。地元の小さな新聞に連載されていたのを、この春一冊の本にまとめ出版されたものです。私より四歳年上の中学の先輩であり、フランス文学者である柏木隆雄氏著「心の中の松阪」を読み終えました。
著者は、工業高校を卒業してふるさとを離れ、一般企業に就職しますが数年で退職し、国立大学フランス文学部へ入り、パリ大学でも学ばれ、長年大学で教鞭をとられてきました。工業高校では、工業化学科に在籍されていたという異色の経歴をお持ちです。松坂城の大きな石垣を見ながら育ったという彼は、六人兄弟の末っ子です。七歳の時にお父さんが亡くなられ、お母さんは和服の仕立てで生計をたててこられました。家の前にあるお城跡に市立図書館があり、子供の頃から図書館でたくさんの本を読まれたそうです。後に仏文学を勉強しようと思った下地の一つは、この頃読んだフランスの劇作家エドモン・ロスタンの原作で、手塚治虫のマンガ「シラノ・ド・ベルジュラック」だそうです。昭和二十年代、三十年代のふるさとが、写真と彼のいろんな思い出とで綴られています。私が知っている先生方も登場します。友人のお父さんや先祖さんも登場します。知らなかったふるさとの昔を知ることができました。国学者本居宣長や小津安二郎映画監督など、郷土の偉人も登場します。梶井基次郎の「城のある町にて」も登場します。時が流れ、住む人も変わり、町の風景も変わっていきますが、その時そこに暮らした人のふるさとへの心象風景には、共通のものがあるように思います。本との出会いを頂いて感謝しています。
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