2013年6月4日火曜日

一大事(3)


 荷物を見送り、後片付けに大掃除とてんやわんやです。そこへまんたん(義母)の五十年来の仲良しの女性が訪ねて来られました。九十歳になられる方です。子供が中学生の頃に一緒にPTA役員をした仲間です。その方もずっと一人暮らしをされています。最近は足が弱くなり一人で遠出は出来なくなったと言われます。足が弱くなったとはいえ、大きな声で面白おかしくおしゃべりされるのは昔のままです。私達も結婚以来親しくおつきあいをさせて頂いています。八十八歳のまんたんと九十歳の友人とは、今度いつ再会できるかわかりません。ひょっとして今日が今生の別れになるかもしれません。皆が瞼を熱くしてしばらくおしゃべりに花が咲きました。お互いに「お元気で」の言葉を交わしさよならをしました。

 都市近郊の下町では、現在高齢者それも独居老人それも女性の一人暮らしが増え続けています。昭和三十年代一家に子供が三~四人もいて、たくさんの子供達が元気に遊び回る声が町中に聞こえていました。高度経済成長時に子供達は成人し就職し結婚し、地元を離れていきました。三世代が同居できるような住宅事情ではありません。住宅事情も原因ですが、日本がどんどん核家族化していった時代です。子供達が出て行った町は、親世代だけが残り、夫婦二人暮しを経て、多くの場合夫を見送り、女性の一人暮らしとなりました。そしてその女性達が高齢となり、まんたんのように子供のところへ身を寄せるか、あるいは施設、またはホ-ムへ入所することになります。まんたんの友人も「息子はマンション暮らしで私が行く場所もなく、ここで最後までいられるか、いられなくなったらホ-ムへ入るしかない、それは覚悟している。できることならここでポックリ逝きたい」と言っておられます。近所周辺では、一人暮らしをされてきた方が入所されて、戸閉めの家が増えています。

 日本が世界一の長寿国となり、少子高齢社会になって、日本のあちこちでこんな状況が見られています。夫が生まれ育った町は、子供達の声もなくシ-ンと静まりかえっています。家の中では独居老人が一人静かにテレビの前に座っておられることと思いますが、悲しい淋しい現実です。

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