人それぞれいつの時代も夢を持っていることと思います。ふるさとを離れてほぼ半世紀、ずいぶんと長い旅路を歩いてきました。結婚した時からの夢は、マイホームを持ちたいというものでした。それは焦りにも似たようなものでした。四人家族になって、上の娘が幼稚園へ入った頃、実現しました。三十歳で、分譲マンションを購入できたのです。何の資金もありません。全額ローンで買いました。今に比べれば、とても安いものでしたが、怖いもの知らずの若さの特権です。ニュータウンに住む同世代のニューファミリーです。環境は素晴らしく、古都奈良での暮らしを楽しみました。五年ほど住んだ頃に、東京へ転勤となりました。東京では社宅住まいです。狭いながらも環境は素晴らしく、都内とはいえ、武蔵野の面影の残る良い地域でした。
その頃、阪神淡路大震災が起こり、関西地方は大変な状況となりました。怖いもの知らずの私たちは、マンションを買ってすぐに土地も買っていたのですが、奈良の不動産屋から連日のように電話が入りました。「大震災が起こり住宅が不足しています。奈良へもたくさんの人が住まいを求めて押し寄せています。不動産が高騰しています。東京にお住まいの今、手放されるのには良い時期かと思います」マンションも土地もローンで買った私たちです。転勤族の身では、これから先どこへ住むかはまったくわかりません。ローンを二つもしょっての暮らしは大変です。よく考えて、手放すことを選択しました。古都奈良とはお別れすることになりました。
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