2020年6月10日水曜日

いくつかの夢(2)


 東京暮らしが四年ほど過ぎた頃、名古屋へ転勤となりました。子どもたちの学校のこともあり、ポアロが一足先に名古屋へ向かいました。会社の単身寮で、しばらくお世話になることとなり、週末は東京へ帰っていたのです。ポアロが何気なく持ち帰った情報誌に、私は飛びつきました。名古屋勤務となればの住まいの情報です。名古屋に隣接するニュータウンの戸建て住宅です。場所は三重県ですが、高速バスで、名古屋駅まで一時間のベッドタウンです。公団住宅の分譲です。二十数軒の分譲で、モデルハウスとなっている住宅の写真には、16畳の半地下となる部屋にグランドピアノが置かれています。私は夢中になりました。あこがれの戸建て住宅です。環境は素晴らしく、大規模公園に面しての立地と、小学校や中学校もすぐ近くにあります。ニュータウンのセンター地区で、ショッピングセンターや銀行、郵便局、診療所、市役所出張所、バス停など、すべてが近くにあります。将来的には、市民ホールも建設予定とのことでした。夢のような素晴らしい物件でした。テレビにも宣伝が登場し、夢はますます膨らんでいきました。住宅は表側から見れば二階建てですが、裏側から見れば三階建てです。16畳の地下室は表側だけ地下となりますが、裏側からは三方向開放されています。外部テラスもあるので、シャッターを付ければ立派な倉庫になります。
  募集期間の期限が迫っています。急いで申し込みました。申し込んだからといっても、購入できるわけではありません。人気の物件で、抽選に当たらねばなりません。ちょうどその頃、ポアロはアメリカへ二週間ほどの出張で留守となります。私は子どもたちを連れて、抽選会場へ乗り込みました。くじには強い私です。しかし願いを成就させるためには、念力がいります。万感の思いを込めて、くじに臨みました。倍率は15倍ほどの高倍率です。念力が通じたのでしょうか、高倍率の物件を手に入れることができたのです。本当に夢心地でした。アメリカにいるポアロに、早速国際電話をかけました。当たるとは思っていなかったようで、びっくり仰天です。購入するとなれば、資金集めです。またまた住宅ローンを当てにする私たちです。諸々の必要な書類を集めて、私は一人で東京から名古屋へ何度か通いました。夢がまた一つ叶う喜びをひしひしと感じました。

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