2020年6月25日木曜日

いくつかの夢(4)


 引っ越して新居での暮らしが始まりました。家族それぞれの夢の、実現途上です。ポアロは、庭の図面を描いて、どこに何を植えるか検討を重ねました。木々としては、モミジ、キンモクセイ、ニレ、ヤマボウシ、サンシュウ、マンサク、ハナミズキを選びました。生け垣は、カイヅカイブキとサザンカです。植木屋さんに頼んでの、植栽です。美しい緑の芝生に憧れていたので、小さな庭ですが、一面に芝をはってもらいました。ポアロは、夢だった庭づくりを着々と進めています。

子どもたちは、念願の戸建て住宅であり、自分だけの部屋を独占し、部屋のレイアウトに燃えています。しばらくしてかわいい子犬が、家族になりました。そのあと縁があって、捨てられた子犬も家族となりました。私はピアノ教師として、忙しい毎日となりました。

 新居での暮らしに慣れてきた頃、忘れていたことが起こりました。引っ越して二年が過ぎています。転勤です。東京から引っ越してきたばかりなのに、また東京への移動です。いつ転勤になっても不思議ではありませんが、転勤という文字は、頭から消えていたのです。どうするべきか、どうしたらよいものか、どういう選択肢があるのか、ずいぶん悩みました。戸建て住宅に住んで荷物も増える一方です。私の仕事も、そう簡単にはやめられません。子どもたちも、思春期という難しい年頃になっています。愛犬も二匹います。これらのすべてをもって、東京暮らしができるとは思えません。悩んだ結果、ポアロの単身赴任ということになりました。毎週月曜日の早朝に出勤して、金曜日に帰宅するということが実現可能となりました。二重生活と高い交通費がかかりますが、ベストの選択のように思えました。今振り返れば若さで乗り切った感があります。まだ四十代でした。単身赴任がそう長く続くとは思っていませんでした。甘く考えていました。この単身赴任は、延々と続くことになったのです。

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