秋になると、たくさんのおいしい食べ物が、皆を楽しませてくれます。私にとって一番の秋の味覚は、栗です。子供の頃、台風が去ったあと、長ぐつをはいて、バケツとイガつきの栗をはさむ「はさみ」を持って、栗の木の下へ栗拾いに出かけました。実家には大きな栗の木が、三本ありました。台風が去ったあとの栗拾いは、子供の仕事です。実がはじけているもの、いい具合にイガが開いているもの、栗の実は、たくさん落ちていました。すぐにバケツがいっぱいになりました。母に茹でてもらって、おやつはたくさんの栗です。お腹いっぱい食べました。そして夕食には、栗ごはんです。秋の味覚が、口いっぱいに広がりました。
二つ目の秋の味覚は、さつまいもです。畑へ行って、母や祖母と一緒に、子供たちはおいも掘りを手伝います。大小いろんな大きさのさつまいもの収穫です。さつまいもを蒸かしてもらっておやつです。バターを塗って食べました。油でカラッと揚げたカリカリの芋けんぴもおいしかったです。母が大学芋をたくさん作ってくれて、子供たちは取り合いしながら食べました。砂糖と水を煮詰めて作った蜜をからませてあるので、とても甘く、ここから超甘党家族が生まれたと思っています。
三つ目の秋の味覚は松茸です。近隣の里山で松茸はとれました。松茸の香りは好きですが、そんなに興奮するようなものではなく、小さかった私は無関心でした。ところが日本国産の松茸がどんどん少なくなってきて、価格は高騰していき、気軽に食べられなくなりました。田舎に住む人達の身近にあった松茸が、手の届かないところへ行ってしまい、淋しい気持ちになります。
秋の味覚の最後に、柿が思い出されます。柿の木は何本かあって、甘柿は富有柿と次郎柿でした。渋柿は、お正月の干し柿にしました。いつでも食べられる柿というイメージで、私は柿には鈍感になっていました。それだけ身近な柿だったといえます。
故郷を離れ、いつのまにか都会暮らしになり、店頭に並ぶ秋の味覚の品々を横目で眺め、遠くなってしまった田舎の子供時代を、懐かしく思い出しています。
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