夏の名残はまだ残っていますが、私の大好きな季節がやってきました。実りの秋、芸術の秋、思索の秋、スポ-ツの秋、食欲の秋、どれをとっても人間に深く関わりのあるものばかりです。稲穂は実り、収穫の時を待っています。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」が、頭に浮かびます。私は秋生まれです。秋が訪れると心が落ち着きます。心がしっとりします。歌「四季の歌」に出てくる歌詞が、ぴったり当てはまるようです。
「秋を愛する人は 心深き人
愛を語るハイネのような 僕の恋人」
私の実家は農家でした。秋になると刈り入れた稲を、庭一面にむしろを広げ干しました。臨月を迎えた母は、六番目となる私の出産が間近というのに、朝から稲干しに精を出します。今の時代からは考えられないことです。ベテランの母は、いよいよというところで、父に産婆さんを呼びに行ってもらいます。そして布団に横になった途端に、私が生まれ飛び出したと、口癖のように言っていました。布団から外へ飛び出した私を、母があわてて引き寄せたと言うのです。そこへ産婆さんが到着し、万事無事だったと、笑い話のような事実を話してくれました。まるで笑い話のようなことですが、母からその時のことを聞くたびに、私の生命力に感動しました。自然の営みは、本来そんなものなのだろうと、人間の命の誕生に、神秘さと単純さを感じてしまいます。
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