若き科学者フランケンシュタインが創り上げた怪物が、求め続けたもの、それは愛情でした。ある日突然、生みの親であるフランケンシュタインの手によって命を授かった怪物は、誕生と同時に親から棄てられ放り出されました。怪物は生きるために食べ物を探し、見つけ、一人でなんとかやっていきます。出会う人間達は、怪物の顔を見ると恐怖に戦き、逃げていきます。怪物は水面に映る自分の顔、姿を見て、愕然とします。誰もが自分を嫌う理由を知ります。それでも怪物は、愛情を求め続けます。怪物には、人間同様心があるのです。
怪物が隠れ家とした小屋の隙間から、覗いて知った人間の日々の暮らしぶり。そこには人への思いやり、深い愛情、尊敬の念があふれています。音楽を知り、言語を学び、文字を覚え、怪物は人間として成長していきます。怪物が隙間から覗いていた隣人家族を心から尊敬し、憧れつづけ、親しくなりたい、愛されたいという望みが高まり、ついに訪問します。慈愛と美徳に包まれている隣人家族です。怪物は、自分の望みが裏切られることはないだろうと確信していたのです。一人で留守番をしている盲目の老人と会話をします。
「私は親、兄弟、友人もいない、不幸で孤独な者です」と怪物が言うと、老人は「それは不幸なことだが、人の心というものは、私利私欲にまみれぬ限りは、兄弟愛と慈悲とに満ちあふれているものだよ」と答えます。怪物の話を聞いた老人は「私は目が見えず、あなたの顔はわからないが、あなたの言葉には、何か誠実だと思わせるものがある」と言ってくれます。怪物は人間の共感に出会えたのです。そしてこれは最初で最後のものとなるのです。そこへ怪物が敬愛する老人の家族が帰宅し、怪物の顔を見ると棒で殴りつけてきました。怪物は失意のどん底に落ち、無抵抗のまま打たれつづけます。いくらでも抗うことはできたはずですが、隙間越しに、怪物が憧れつづけ、友達になりたいと心から愛した隣人家族に、危害を加えることはできなかったのです。ここの場面では、怪物が愛し期待し、確信していた人達からも受け入れてもらえないという、怪物の悲しみや孤独感、絶望感が頂点に達します。
怪物がかわいそうで、哀れで、読者の胸にじんとくるものがあります。怪物を助ける手立てはないのでしょうか。人間にできることはないのでしょうか。
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