最近のことですが、テレビでカンパネラおじさんのことを知りました。今や有名人で、ユーチューブにも登場されています。ピアニストフジコ・ヘミングの演奏を聴いて感動し、弾きたいという一心で7年の歳月をかけて弾けるようになったそうです。職業は漁師で、楽譜は読めず、ピアノを弾いたことはなかった人です。リストのラ・カンパネラです。超絶技巧練習曲で難曲です。リストがこの曲を発表した時には、難しくて誰も弾けなかったような難曲です。素人のおじさんは、52歳から7年かけて、59歳の時に自分の夢を達成されました。世の中には、すごい人がいるものだと驚きます。
半世紀ほど前のことですが、アメリカのピアニストアンドレ・ワッツが来日しました。私より少し年上の若い青年でした。テレビで彼の演奏を初めて聴いて、感動しました。リストのラ・カンパネラです。この曲を弾きたいという情熱で、先生にレッスンをお願いしました。楽譜を読むのも大変です。♯が5つの調で、臨時記号がたくさんあります。こんがらかって頭が変になりそうです。鐘が鳴る音を表現している部分は、2オクターブも飛んでの演奏です。小さな手を最大限に広げ、鍵盤の上を飛びまわります。楽譜を自分のものにするのも至難の業、弾きこなすのも至難の業です。途中でギブアップしそうです。弾きたいという一心で、レッスンをお願いした以上、挫折はできません。達成させるには、根性がいります。根気がいります。こつこつの努力です。曲を仕上げようという信念がいります。最後には暗譜です。こんなことを実現できた私は、今振り返っても若かった自分をよく頑張ったと褒めています。こんな積み重ねが、自分への自信へとつながりました。
ピアニストフジコ・ヘミングは魂のピアニストと称されています。ヨーロッパで活躍されて、25年ほど前に帰国されて、脚光を浴びることとなります。その頃、テレビで彼女のことを知り、ファンになりました。彼女の人生が、演奏に滲み出ているのを感じます。
カンパネラおじさんは、毎日7~8時間かけて、10個の音ずつ弾いて覚えていったそうです。素人のカンパネラおじさんに触発されて、私もまた弾き始めました。半世紀ほどの時を経て、まったく弾けません。もちろん暗譜などできていません。初めからの出直しです。一回弾くのに30分はかかります。若い時と違って、視力も体力も根気も落ちています。それでもまた弾けるようになりたいという想いが、頭を持ち上げています。ぼちぼち、こつこつの再チャレンジです。
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