娘が無事帰国した次の日に、フランスからの客人を迎えました。6月に来日した青年のお父さんとおじいさんです。福島県出身の日本人女性と国際結婚したレバノン系フランス人の男性とそのお父さんが、福島を拠点にして北海道函館から広島まで旅行され、京都へ寄られました。
82歳の父と48歳の息子の、男二人旅です。その話を聞いた時、仲の良い父と息子の関係にほのぼのとした気持ちになりました。父と息子との関係は難しいという話をよく耳にしますが、私の父と兄との関係も最後の最後まで深い確執が続き、父の最期のステージで二人が少し歩み寄った感じで幕引きとなりました。仲の良い父と息子の関係の外国人に、私は会う前からワクワクしてその日を待ちました。
京都駅へ車で迎えに行ったのですが、私達に満面の笑みで大きく手を挙げて振る陽気な息子さんと、その隣で静かに頭を下げてあいさつされるお父さんの、対照的なお二人が第一印象でした。
京都には二泊三日という短い滞在でしたが、一緒に食事をしたり、いくつかの名所旧蹟を案内したりして、とても楽しい充実した時間を過ごしました。金閣寺と龍安寺へは、中へ入りゆっくり見学しました。龍安寺石庭で、座って石庭を眺めておられたのは、ほとんどが外国の方で、驚きました。和食懐石や回転寿司、和風喫茶も、おいしい!の連発で、とても喜ばれました。
息子さんはシステムエンジニアをされており、日本語が堪能で、私達は何の違和感もなく会話ができ、外国人ということを忘れるほどでした。82歳のお父さんは、ソルボンヌ大学天文学の博士号を取得されており、六か国語を話されます。ロシア語、ドイツ語、スペイン語、レバノン語、フランス語、英語です。娘はフランス語と英語で会話をしていましたが、私達は日本語だけです。私は英会話教室へ遊びのつもりで行っていますが、普段外国人講師と気楽に話しているのに、今回は緊張しているのか気構え過ぎているのか、英会話力が発揮できず全くゼロのような状態で、落ち込んでしまいました。82歳の人生についていろいろお聞きしたかったのに、とても残念でした。彼が育った家庭は、音楽を愛する両親の元、小さい頃からピアノを習い、母上も妹さんもピアノを弾き、叔母さんはピアニストをされていたそうです。最近はオーボエを吹いているとおっしゃいました。彼のご長男は、パリ在住の著名な現代音楽の作曲家だそうです。82歳という高齢に関わらず、健脚の持ち主で、錦市場や寺町、先斗町など、京都の町を歩き回り、最後の夕食の後は、祇園、花見小路、東山八坂の塔や二年坂、石塀小路、八坂神社、四條通り、河原町通りを二時間半も歩きました。私達は心配になり、「タクシーに乗って帰りましょうか」とお聞きしましたが、「心配ないよ」とのことで、年齢のことも忘れて歩きました。彼はパリで一人暮らしをされています。「時間は存在しない」というテーマで本を執筆されており、現在も七冊目を執筆中とのことです。難しい宇宙哲学のようです。私達凡人には理解しにくい分野のような気がします。お兄さんがアメリカ在住とのことで、一人でアメリカへも行かれます。お料理もされての現役人生には驚くばかりです。
お別れの言葉は前もって考えて、京都駅へお送りしました。
Have a nice trip and have a good life!
お父さんは涙を浮かべられて「神のご加護を!」と、息子さんは「二十年分の楽しみを頂きました」とおっしゃいました。こちらこそとても楽しい時間を過ごさせて頂きました。
フランスでの再会を約束し、お別れしました。
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