2016年8月29日月曜日

機上の人

 一ヶ月のバカンスを日本で過ごした娘は、フランスへと戻っていきました。私達は、自宅を朝早く五時に出て、大阪伊丹空港まで車で送りました。そして今、展望デッキで飛び立つ飛行機を見送っています。私は、フライト予定時間を書いたA4の紙を手に持って、飛行機からよく見えるようにと一生懸命振っています。飛行機から乗降デッキが外され、飛行機は静かに動き出しました。紙飛行機のように軽やかに空を飛ぶ飛行機ですが、近くで見るととても大きいものです。


 何百人もの人の命とたくさんの荷物を乗せて、大空を飛ぶ飛行機は偉大です。それを発明したのは人間です。偉大な偉人の恩恵を受けて、人は世界を飛び回ります。飛行機は行進するようにゆっくり移動していき、エンジン全開で轟音を発し滑走路を走り、私の目の前で離陸しました。




 私が一生懸命振るA4の白い紙は、国旗のように見えたでしょうか。飛行機はフワッと浮き上がり地上と離れ、あっという間に空高く舞い上がりました。そしてすぐ雲の中へと姿を消しました。日本からフランス南部の町まで24時間の長旅です。どうか無事にと願い祈り、私は一生懸命白い紙を振り続けました。娘は機上の人となり、いろんな思い出を残して遠い異国へ飛んでいきました。たちまち私の目はかすみ、飛行機を包み込んだ雲もかすんで見えなくなってしまいました。長いようで短く、あっという間に過ぎ去った私達のバカンスも終わりました。


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