2020年11月2日月曜日

読書の楽しみ(ミヒャエル・エンデ)

  ミヒャエル・エンデの作品を読破しました。子どもたちが小学生だった頃にプレゼントしたものです。代表作三冊を一気に読み終えました。「モモ」「ジム・ボタンの機関車大旅行」「ジム・ボタンと13人の海賊」の三冊です。三十年以上前にその三冊を買ったのですが、愛蔵書として大切に保管してくれていました。子どもの本としては、少し高価なものでした。当時読書感想文のコンクールがあり、「モモ」が小学校高学年の課題図書の一つに選ばれていました。当時「モモ」はざっと読んだのですが、今回もう一度しっかり読もうと思ったのでした。 



 

 「ジム・ボタンの機関車大旅行」の初版は1960年、「ジム・ボタンと13人の海賊」は1962年、「モモ」は1973年です。第一作からドイツ児童文学賞を得て、世界各国でひろく知られた作家となりました。「モモ」でも再びドイツ児童文学賞をさずけられました。ミヒャエル・エンデは1929年に南ドイツに生まれました。父は画家エドガー・エンデです。ミュンヘンの演劇学校を出て、しばらく俳優をしていたそうですが、のちに子どものための本の執筆を始めました。

 初めて「モモ」を読んだ時は、子どもには少し難しいのではないかと思いました。「時間がない」「ひまがない」大人の口癖です。いそがしいのは大人ばかりではありません。子どもたちもいそがしいのです。これほど足りなくなってしまった「時間」とは何なのか、それがテーマです。機械的にはかる時間ではありません。人間の心のうちの時間、人間が人間らしく生きることを可能にする時間、そういう時間がだんだんと失われてきました。「モモ」が書かれた時からほぼ半世紀が経ち、「時間」の問題はますます加速しています。科学技術の進歩発展の恩恵を受けて、スピードが最重要視されています。心が置き去りにされて「時間」と「結果」だけで評価される現代社会です。これからもますますこの方向に人間が踊らされるのだと思います。ミヒャエル・エンデは、少女モモを通して「時間」の大切さを、人間に生きることのほんとうの意味を気づかせ考えさせるのです。

 「ジム・ボタンの機関車大旅行」「ジム・ボタンと13人の海賊」を読んでの感想は、知らないうちにファンタジーの世界に入りこんでいるというものです。大人でさえ夢中になって、いつの間にかミヒャエル・エンデの世界に引き込まれているのです。子どもたちの思考は、純粋で柔軟です。素直にミヒャエル・エンデの世界を楽しむと思います。ミヒャエル・エンデは、自分の作品を「メールヘン・ロマン」と名付けました。大人にも子どもにもかかわる現代社会の大きな問題をとりあげ、その病根を痛烈に批判しながら、楽しく美しい幻想的な童話の形式にまとめました。作者の優しさ、寛大さ、思考の深さが、作品の中にあふれています。登場人物のせりふの端々に感じとれることができます。ミヒャエル・エンデのファンになりました。あといくつかの作品も読もうと思います。彼は1995年夏にこの世を去りました。65歳でした。日本人女性と結婚していた時期もあり、日本びいきだったそうです。

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