先日故郷で高校の同窓会がありました。まだ興奮冷めやらぬ気持ちでブログを書いています。今年は古稀を迎える私達にとって節目の年です。高校を卒業して早半世紀以上が過ぎています。うそのような本当の月日の流れです。故郷を離れて奈良、東京、三重北部、京都、岡山へと移動して京都へ戻り、現在は京都と三重の二都暮らしをしている私は、初めての出席です。今迄どんなに不器用に生きてきたかを、思い知る機会となりました。同窓会の案内が届き、しばらく考えて出席することを決めて返信を投函しました。そのあと幹事さんから電話をもらい、懐かしい声とともにお顔が思い出され、一気に十代の頃にタイムスリップしてしまいました。それから当日まで緊張と胸の高まりが続き、その日を迎えることとなりました。
会場は地元の老舗ホテルです。昼食をいただきながらのパーティーです。30分前から受付が始まります。私が着いた時にはすでに8人ほどが集まっていました。お顔を見て一言交わすと、すぐに当時に戻りました。恩師をお迎えして、会が始まりました。席はくじ引きです。この日の出席率は2割ほどです。東京から、大阪から、そして県内各所からの参加です。乾杯のあと、幹事さんから進行についての説明がありました。旅立たれた人が何人かおられるので、始めに黙祷を捧げました。それから食事をしながら、マイクが回り一人ずつのスピーチです。緊張します。私は昨年のフランス行きのことも話しました。娘がフランスで長く暮らしていること。昨夏フランス人と結婚したこと。私達はフランスに一ヶ月滞在したこと。そして義母まんたんのことなどです。始めの言葉は「○○○○です。旧姓は忘れました。半世紀を超えて初めて出席し緊張しています。先生は当時とまったくお変わりなくあの頃のままで驚いています」恩師は九十歳の女性です。それでも私にとったらあの頃のままの先生です。小柄な華奢な先生が、和服をびしっと着られて、メガネをかけられているお顔は当時のままなのです。
幹事さんからの説明で「自己紹介に夢や希望、何でも話して下さい」とのことだったので、私は「フランス語や英語を少しでも身につけ、世界に羽ばたきたいと思います」と、大きなそして不可能な夢と希望を冗談のように話してしまいました。皆さんのスピーチから、それぞれの人生模様を垣間見るようです。大病をされた人、連れ合いを亡くされた人も何人かいます。孫の子育て支援や、趣味、今流行りの終活、そして体の不都合などです。体に表れる老化の数々、膝、足腰を痛めている人はほとんどです。動脈瘤を抱えている人もいます。見た目の姿は、皆平等にシニアです。しかしこの席では当時に戻っています。それが嬉しく楽しく、そして面白いのです。
幹事さんが「今日は○○さんが出席されると知って、アルバムを持ってきました」と、私の旧姓を名指しです。「私は体育祭のリレーに三年間とも出ましたが、アンカーはいつも○○さんでした。一度だけゴールを切ったことを覚えています」と、恥ずかしながらの遠い昔のカモシカのようと言われた、私のカモシカ時代を披露してくれました。忘れ去っていた遠い昔がよみがえりました。「アルバムを回しますので見てください」とのことです。体育祭や文化祭、修学旅行などの懐かしい写真です。皆が当時を懐かしく思い出しました。幼稚園の園長を務め、教諭として最後まで仕事を勤め上げた頑張り屋さんです。その貫禄が滲み出ています。かつてのクラスメイトとおしゃべりをしていて、知らなかったことを知りました。国際結婚した娘さんが他にもおられました。イタリア人と結婚して、現在イタリアミラノ在住だそうです。国際的な音楽のマネージメントをされている娘さんもいました。外国語を巧みに話し、日本と外国を飛び回っているとのことです。故郷は一地方という観念を持っていましたが、昔と違い今は国際的になっています。故郷から出た親たちですが、次の世代は世界に羽ばたいているようです。
皆のスピーチが終わり、最後に恩師が話してくださいました。開口一番は「古稀を迎えた皆さんおめでとうございます」で始まりました。「この歳まで生きてきてまず思うことは、感謝です。唯々感謝です。すべてに感謝です」他にもいろいろ話されて、締めくくりは「七十歳はまだまだこれからです。どうぞ皆さんこれからの日々を愛と希望を持って生きて行ってください」と、胸に響くお話しをしてくださいました。御主人は九十三歳で健在とのことです。三年毎に開かれる同窓会です。「ぜひ三年後も出席して下さい」とお願いして、恩師をお見送りしました。
緊張して出席した同窓会ですが、終えたあとも興奮は続いています。青春時代を共に過ごした友情は、未来永劫変わらないことを痛感しました。時代を共有するという絆は、固く素晴らしいものです。みんなに笑われそうですが、古稀を迎えても心の内は若者です。恩師をお手本にさせていただいて、これからの日々を過ごしたいと思います。