何十年も前、子育て真っ只中の私は、子供達にいろんなお話を読み聞かせていました。その中に「はじめてのおつかい」というのがありました。
私はピアノ教師として家で仕事をしていました。子供達が小さい時は、ニュータウンでマンション暮らしをしていました。ニュータウンは新しく開発し造成して造られたもので、ショッピングセンターは一ヶ所に集まっています。住まいのすぐそばにお店はありません。食料はほとんど週末にまとめ買いをしていました。そんな暮らしの中で、夕方が近づくとおとうふやさんが、カランカランとカネを鳴らしながら自転車で回ってきます。レッスンをしている私は「おとうふを買ってきて」と、上の子に頼みます。おとうふやさんは、自転車に乗って次の通りへ行ってしまいますが、上の子は走って追いかけて、必ず買ってきてくれました。上の子は、四歳頃から、そして下の子も四歳頃から「はじめてのおつかい」をして、私を助けてくれる貴重な存在だったのです。
時は流れて、子供達は独立し、私達は二人暮しとなりました。そしてシニアの生活が始まりました。買い物が家族でするレジャーの一つだった私達は、様変わりしました。二人で買い物に行くことは多いのですが、ポアロ(夫)が、買い物袋を持って、一人でおつかいに行くことが増えてきました。そうなった理由は、思い当たります。ポアロは、何事をするにもパッパと手際よくする方なので、私が買い物に出る前の準備に時間がかかることが嫌なのだと思います。待たされるのはイライラするのだと思います。私がのそのそしている間に、待っている間に、買い物に行って帰ってくるほどです。買い物袋とカード類、現金、何を買うかを書いたメモを渡して「お願いします」と、私は見送ります。そういうことからシニアおじさんのおつかいがスタートしました。
食料を買いにスーパーへ何度も足を運ぶようになると、いろんなことを学ぶようです。今日は何が良い品であるとか、時間的に何時頃に商品が新しくたくさん出されるかとか、他のスーパーよりいくら安く売っているとか、帰ってから私に報告してくれます。そして自分でも、おつかいが楽しいものに感じられてきたようです。主婦としての仕事はたくさんありますが、食べるための食料を買いに行くのもその内の大切な仕事です。私は四十年以上も続けてきました。これからは、買い物、料理、掃除など、家事すべてを分担して、二人でやっていこうと思います。いよいよこれからが、人生の第三ラウンドです。
「はじめてのおつかい」の思い出が、子供から夫へと移り変わってきた我が家の歴史です。
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