かあこちゃんは、とても不思議な気持ちがしていました。わたしのお家は、変なのかしら、みんなの家と違うのかしら、と考え始めました。わたしの家では、みんなが働いている。子供も大人も、黒牛も乳牛も、にわとりもねこも、犬もやぎも。子供達に、滋養があるやぎのおっぱいを飲ませる為に、やぎを飼ったのだと、お父さんが、話していたし、ねこは、ネズミを追っかけて、犬は、留守番をしてくれる。わたしの家では、いろんな食べ物を作っている。米、麦、そうめんやひやむぎ、みそしょうゆ、梅干しらっきょうたくあん、梅酒、おもちかきもちあられ、きなこにおはぎ、パンもケーキも、お母さんが作ってくれる。かあこちゃんは、考えました。町で買う物は何かしら。魚と肉と、とうふあげ。洋服やセーターは、お母さんとおばあちゃんが、作ってくれる。でも、お正月には、町で洋服を買ってもらっていることを、思い出しました。みんなの家では、ほとんどの物を店で買っているんだわ、だからあんなに驚いていたんだわ。かあこちゃんは、いろいろ考えました。お兄ちゃんは、朝早く起きて、しぼった乳を、お父さんと牛乳屋さんへ運び、殺菌してビンにつめて配達している。わたしは、お姉ちゃん達と卵を集めて、汚れをとり箱につめる。それをお父さんが、店へ持って行く。かあこちゃんは、一年生のわたしも、ちゃんと仕事をしているんだよと、胸を張りました。
レオは、レオナルドダヴィンチからもらった名前です。レオと散歩している時、捨て犬と出会いました。赤ちゃん犬が、ヨチヨチと後をついてきます。もらい手を探しましたが見つからないので、大家族の一員になりました。レオの弟なので、ナルドです。来てすぐナルドは、重い病気になり、入院しました。かあこちゃんは、毎日病院へ通い励まし、一生けんめい祈りました。ナルドは元気になり、三人で追いかけっこしたり遊び回りました。
元気だったおじいちゃんが、秋の終わりに病気でなくなりました。かあこちゃんの家には、二百年も前から、家の守り神だと言い伝えられている、大きなくすの木があります。
「おじいちゃんは、どこへ行ったの?」お母さんに聞くと、「お空に昇り、このくすの木へ帰ってきて、いつもみんなを見守っていてくれるのよ」と、言いました。
今、かあこちゃんは、くすの木を見上げています。あれから何年たったのかしら。みんなみんなレオもナルドも、くすの木に行ってしまった。「ありがとうみんな。いつもいっしょよ。ずーっとずーっといっしょよ」かあこちゃんは、孫の手をギュッと握りつぶやきました。
おわり
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