母が作ってくれた木目込み人形は、たくさんあります。始めにつくったのは、三人の娘たちへのものでした。薄紫の道行きコートを着た、三人の娘たちです。母が木目込み人形を作り、父がケースを作りました。二人で三人の娘の下へ、届けてくれました。
次に作ってくれた木目込み人形は、孫たちへのものです。兄のところに三人、上の姉のところに二人、下の姉のところに一人、そして私のところが二人、計八人の孫です。男の子が二人、女の子が六人です。八人の童です。元気な童たちは、ひざ下までの着物を着ています。手には、お花や風車などを、持っています。母は、八人の孫たちの個性を、うまく表現しています。今では、孫たちも子育てに忙しい親となり、かわいかった童も世代交代となっています。母は、木目込み人形の集大成として、高砂を作りました。翁(おきな)と媼(おうな)です。高砂人形は、長寿と夫婦円満の縁起物です。母亡きあと、父は十年一人で頑張りました。父からもらい受けた高砂は、今は私の手元にあります。たくさんの木目込み人形は、いつも母を思い出させてくれます。