2013年5月28日火曜日

「窓から見える風景」


私の部屋から見える風景は刻々と変化している
美しい雄大な山々が見えていたのも束の間
次々と高層マンションが建ち山は見えなくなった
五十年現役を貫いた老舗旅館が姿を消した
廃業を知らせる看板がかけられ建物はシ-トでスッポリ覆われた
長い間にぎやかな音が鳴り響き解体工事が進んでいる

そしてある日解体工事が終わりシ-トがはずされた
すると旅館が建っていた向こうに山が顔を出した
久しぶりに私の部屋からまた山が見えるようになった

部屋から山が見える
それは私の青春時代につながる
四季折々の山の表情
私はボ-ッと山を見つめるのが大好きだった
人が生まれ育ち去っていくのを静かに見守っている山
どんなことが起ころうと泰然自若の風
その山に大きな懐を感じる

大きなクレ-ンが二機忙しそうに動く
右へ左へ大きな手を伸ばす
朝から夕方まで働き詰めに動く
工事現場には活気がある
一日一日着々と工事は進む
大きなクレ-ンの動きを見ているだけで元気をもらう

老舗旅館のあとには現代的なホテルが建つ
工事が進みホテルは一階二階と高くなってきた
二階の私の部屋から山が少しずつ見えなくなった
私の部屋から見えた山はラストシ-ンを迎えた

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